第3回 節税に励め!

第1回で、消費税は25%(食品などは15%、交通機関などは8%)というお話をしましたが、ノルウェーの所得税はどのくらいだと思いますか?

ノルウェーでは、年収が約37万クローネ(約57万円)を超えると所得税がかかってきま...
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第1回で、消費税は25%(食品などは15%、交通機関などは8%)というお話をしましたが、ノルウェーの所得税はどのくらいだと思いますか?

ノルウェーでは、年収が約37万クローネ(約57万円)を超えると所得税がかかってきます。医療や福祉、年金を支える社会保障費は、年金所得者で3%、第一次産業従事者で7.8%、その他の産業従事者では11%となります。さらに、国税と地方税を合わせた所得税は累進課税方式で、28%から最大55%となります。いろいろな控除もあり計算は複雑ですが、大雑把に言うと、一般的な収入の人であれば30%以上の税金を納めていると言えるでしょう。

これだけ税金が高いと、国民の節税意識もおのずと高まります。毎年、確定申告の時期になると、控除額を超えた支出がないかしっかりチェックします。会社勤めの人の場合、自家用車での長距離通勤や業務に関連する教育費などが控除の対象となります。また子どもがいる場合には、保育ママ、保育園、学童にかかる費用も対象となります。

また、ノルウェー北部には所得税の優遇制度があります。ノルウェー最北のフィンマルク県と、その南に隣接するトロムス県の北部では、所得税率が他の地域の28%からに対し、24.5%からと低めに設定されているのです。南北に長く、日本とほぼ同じ面積にたった500万人しか住んでいないノルウェー。放っておくと地方の過疎化が進み、インフラの整備などのコストがかさみます。こういった事態を避けたい政府や地方自治体が、北に住む人たちにさまざまな優遇制度を提供することで、企業や市民をひきつけようとしているのです。

さらに、家の一部分を他人に貸している場合、その家賃収入は課税対象外となります。ノルウェーの街を歩いていると、玄関が2つついた家をよく見かけます。外から見ると一軒の家ですが、中が二つに分かれており、一部をアパートとして貸し出せるような作りになっているのです。また、学生などに寝室のみを間貸ししている人も多くいます。間貸しでも、月の家賃収入は4,000ノルウェークローネ(約5万8,000円)は下りません。この収入が課税対象外となるのですから、おいしい話だと思いませんか?

税務署から届いた納税者カード。私の場合、税率の低いフィンマルク県在住で年収も低いため、今年の暫定的な税率は25%。最終的には確定申告をして納税額を調整します。

しかし、どこにでも悪い人はいるもの。脱税をくわだてるケースもあるのでは?と思われるかもしれません。ところがノルウェーには、正義の味方、スカッテリステル(skattelister)があるのです。スカッテリステルとは納税リストのこと。ノルウェー全市民の年収・資産額・納税額が掲載されたこのリストが、なんと一般に公表されているのです。始まりは19世紀半ば、納税システムがしっかり整っていなかった頃に、税金の計算をきっちりと行うために導入されたものだそう。それが今日まで脈々と伝わり、2001年以降はインターネット上でも公開されています。著名人でも近所の人でも、会社の上司でも気になるあの人でも、名前を入れて検索すれば、年収・資産額・納税額が丸分かり。羽振りのよい人の年収や納税額が低いようなことがあれば、何かやましいことがあるのではと疑われます。

このように、税金の高いノルウェーでは、節税を含む税への関心が非常に高いといえます。自分が税金をいくら払って、その税金がどのように使われているのか、市民の目が光ります。

(2012年3月9日のレート、1ノルウェークローネ=約14.46円で計算)

御供理恵(みともりえ)/プロフィール
昨年末に個人事業主の登録を済ませ、「経費」という新しい概念が生まれたワタシ。まだまだ不慣れで、うっかりレシートを捨ててしまって後悔したことも。さっそく第一四半期の税金振込用紙が届き、ノルウェー市民としての自覚も増しました。ウェブサイト:Arctic Rainbow

以上