第1回 参鶏湯・サムゲタン-韓国-暑い韓国の夏を乗り切るスタミナ料理

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参鶏湯・サムゲタン

7月も半ば過ぎには東京でも梅雨が明け、本格的な夏に入る。夏の土用は、最も暑い盛り、立秋までの18日間。旧暦で数えるので毎年変わり、今年は7月19日~8月7日となる。

この夏土用の期間中にある丑の日に、夏バテ防止にうなぎを食べる習慣があることは広く知られている。土用の入り当日が丑の日に当たる今年は、7月31日にも、もう1度丑の日があるので、2回チャンスがあるというわけだ。もっとも本来はうなぎでなくとも「う」のつくものを食べればよかったらしいが……。

お隣の国、韓国にもこれに似た風習がある。土用にあたるのは三伏(サンボッ)。三伏の入りの日が初伏(チョボッ)で、終わりの日が末伏(マルボッ)そして、その中間に中伏(チュンボッ)があって、この3つの伏日(ポンナル)をまとめて三伏と呼ぶ。こちらも旧暦に基づいており、今年の初伏は7月14日、中伏は7月24日、末伏は8月13日。そしてこの伏日には、やはり夏の暑さに負けないように精のつく食べ物をとるという。

犬鍋もそのひとつだが、さまざまな事情によりその人気はかつてほどではない。昨今は、同じく精のつく食べ物として知られる参鶏湯(サムゲタン)を食べるのが一般的。もちろん、うなぎと同じく参鶏湯そのものは一年中食べられるポピュラーなメニューで、人気店にはいつでも行列ができている。しかし、伏日ともなれば、参鶏湯を出す店はどこであれ、たくさんの人が列を成すのである。

参鶏湯は、丸鶏のおなかにもち米、朝鮮人参、栗、にんにく、なつめを詰め込んで、じっくり煮込んだもの。特に味付けはされていないので、食べるときに塩やキムチを加えて、好みの味にする。よく煮込まれているので、肉は箸で簡単に骨からはがれるほどに柔らかく、味も淡白。素材の旨味がたっぷり出たスープととろとろのもち米は、上等の鶏粥のようで本当にやさしい味わいだ。

こってりしたものが多い韓国料理にあって、これほどさっぱりしたものが「精のつく食べ物」というのもちょっと意外だが、辛くて濃い目の味付けの韓国料理に飽きたときにもオススメ。伏日でなくても、韓国を訪れる機会があれば、ぜひ一度、味わってみてほしい。

≪福子(ふくこ)/プロフィール≫
東京在住。アジアを中心として旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。旅に出るといつも、食べられる量と食べたいものの量のバランスが合わず……着脱交換できる胃袋が欲しいと切に思う。