第6回 黙っていても資産が増える? それなら使っちゃおう!

もうすぐ夏休み。この時期のノルウェーでは「夏休みはどこへ?」が挨拶代わり。年間5週の有給休暇があるノルウェーでは、夏に1ヶ月ほどの休暇を取って海外に出かける人が多いのです。行き先として人気があるのは、ヨーロッパ内ではスペ...
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ノルウェー人は別荘でのんびり過ごす時間が大好き。「何もないことが別荘の醍醐味」だった昔と違い、最近は水道や電気を引き、トイレやシャワーも完備した別荘が人気。当然、お値段も高くなります。

もうすぐ夏休み。この時期のノルウェーでは「夏休みはどこへ?」が挨拶代わり。年間5週の有給休暇があるノルウェーでは、夏に1ヶ月ほどの休暇を取って海外に出かける人が多いのです。行き先として人気があるのは、ヨーロッパ内ではスペインやギリシャ、また、エジプトやタイにも多くの人が訪れます。しかし、家族揃って1ヶ月も旅行するとなると、その予算はかなりのものになります。


夏以外の時期は節約に励んでいるのかと思いきや、実はノルウェー人は買い物が大好き。例えば、最近は自動車の売れ行きも上々で、昨年の自動車販売台数は183,400台と2010年比6%増、2009年比35%増という右肩上がりの成長をみせています。ヨーロッパ全体の景気が沈む中、ノルウェーの好調さがよく表れています。

また、住宅は「バブル」といってよいほどの値上がりをみせています。住宅価格の変動を示す住宅価格指数は過去1年で6.3%上昇、2005年の住宅価格を100とすると、現在の住宅価格はなんと157にもなります。こんな住宅価格高騰の中、2012年第一四半期の住宅販売件数は前年度同時期に比べ13%上昇しています。

売れているのは一般住宅だけではありません。休暇を過ごすための別荘の売れ行きも大好調なのです。2012年第一四半期の国内の別荘販売件数は、前年度同時期から3%上昇しています。国内だけでなく、海外で別荘を購入する人も多くいます。そんな別荘地として人気なのは、近くて物価の安いスウェーデン。2011年のノルウェー人によるスウェーデン国内の別荘購入件数は前年比7%増、2007年から比べると34%も上昇しています。現在、スウェーデン国内の別荘のうち、9,200軒以上をノルウェー人が所有しています。

この買い物三昧の裏には、住宅価格の上昇と驚異的な低金利という要素があります。ノルウェーでは他のヨーロッパ諸国同様、不動産の価値のほとんどは土地ではなく家屋にあります。住宅の耐用年数が高く、築年数が100年を超える物件も珍しくありません。家屋の価値が目減りしないどころか、現在のノルウェーのようなバブルに近い状況では、家屋の価値はどんどん高騰していきます。住宅ローンを払いきっていなくても、住宅の価値が上がれば資産は増えていきます。資産が増えれば新たにローンを組むことも可能なうえ、現在の金利は1.5%と、この好景気では信じられないほどの低金利で高額なローンも組みやすいのです。この繰り返しで、どんどんとローンを組み続ける、そんなライフスタイルが当たり前になりつつあります。

そんな状況下に置かれたノルウェー人は、自分がお金を持っているような錯覚に陥りがちですが、実は大きな負債を抱えているケースが多いのです。2010年のノルウェーにおける世帯あたりの平均的な台所事情は、不動産などの資産が777,100ノルウェークローネ(約1,020万円)、貯蓄などの資本が773,900ノルウェークローネ(約1,015万円)、ローンが1,193,400ノルウェークローネ(約1,566万円)となっています。日本の世帯あたりの平均貯蓄額1,657万円、平均ローン額431万円と比べると、いかに大きなローンを背負っているかがよく分かります。

第1回からノルウェーのお金事情についてお話ししてきましたが、現在のノルウェー人は童話アリとキリギリスの「キリギリス」。将来のお金は他人任せで「備え」という言葉を忘れてしまったノルウェー人。そろそろライフスタイルを考え直すべきかもしれません。

(2012年6月8日のレート、1ノルウェークローネ=約13.12円で計算)

御供理恵(みともりえ)/プロフィール
北極圏の街、アルタ在住。先日、サイズといい場所といい、かなり理想に近い物件が売りに出ていたので入札に参加。しかし、入札額はうなぎのぼりで、最終的には440万ノルウェークローネ(約5,800万円)で落札。当然わが家は途中で脱落しましたが、人口たった2万人弱のこの街の物件がどうしてこんな高値をつけるのか、まったく理解に苦しみます。とりあえず、貯金に励むとしましょう。ウェブサイト:Arctic Rainbow