第3回 お誕生日パーティーの裏側?

息子が小学校へ入学してからというもの、度々パーティーへの招待状が届くようになった。パーティーといっても、ハイヒールとクラッチバッグでおしゃれして出かけて、カクテルを片手に誰かと談笑するような「大人のパーティー」ではない。...
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息子が小学校へ入学してからというもの、度々パーティーへの招待状が届くようになった。パーティーといっても、ハイヒールとクラッチバッグでおしゃれして出かけて、カクテルを片手に誰かと談笑するような「大人のパーティー」ではない。こどもたちのお誕生日パーティーのお招きである。そしてこれがなかなかの一大事なのである。招く方にとっても、招かれる方にとっても。

イギリスでは特に、小学校低学年の間はクラス中を招いて賑やかにお祝いするのが一般的である。その人数はと言えば、学校や幼なじみの友達、その兄弟姉妹たち、その両親、すべて集まると30人から50人の大所帯となることも少なくない。だからこどものパーティーと言えども「会場」が必要となる。

人気で手軽な会場といえば、スポーツセンターなどのインドアプレイグラウンド。一時間貸し切りでこどもたちを自由に遊ばせ、その後併設のカフェでごちそうとケーキでお祝いする。似たようなところでは、プールでたっぷり泳いだ後、同じようにテーブルを囲んでパーティーとなる「プールパーティー」がある。こちらは大人も一緒に泳がなければならないので、親も水着を持参して参加する。

趣向を凝らしたところで「ファームパーティー」。ちょっと郊外にあるふれあい農場へ出かけ、馬車に乗ったり、うさぎに触ったり。こどもたちの好奇心が満たされる貴重な体験ができる。スタッフもキッズパーティーをたくさん手がけているプロフェッショナルなので、つきっきりで子どもたちを楽しませてくれるし、カフェではこどもの好きなフライドチキンやチップスがサーブされる。


ピザレストランを借りて、トッピングを自分たちでのせていく「ピザ作りパーティー」や、白地のお皿やマグに好きな絵を描いて焼く「ポッタリー・パーティー」といった体験物も人気。ピザはともかく、不思議な柄のお皿がまた一枚と増えていくのはどうかとしても……

こういったパーティーは、会場の貸し切りとフードがパック(パッケージ)になっている場合が多く、親が準備をする手間は省けるものの、その分お値段は割高である。一方、場所だけを借りる場合は近くのコミュニティ・センターや教会のホールなどを比較的安く借りられる。食べ物、飲み物、飾り付け、エンターテイメント等、あらゆることを自分たちで準備する手間をいとわなければ、お決まりのコースではない、こどもの個性が感じられるパーティーとなることも多い。

さらには、エンターテイナー、マジシャンがトリックを見せたり、歌や踊り、ゲームをさせてくれたり、ハープ奏者がBGMを奏でていたりする場合もある。

女の子ならプリンセス、男の子ならパイレーツやスーパーヒーローなど、「ファンシードレス(仮装)」がドレスコードのパーティーでは、それぞれにユニークな衣装が登場する。息子はヴィンテージショップでみつけたスウェードのベストに、ディスカウントショップで購入した帽子をかぶるカウボーイスタイルが定番。ファンシードレスばかり、いくつも揃える気にはなれないので、だいたいこの格好だが、本人はいたって気に入っているようで良かった。

それにしても、まさか毎週末が(時には)こどもの誕生会で占められる事になるとは思わなかった。招かれる側の親としては、年間で購入するプレゼントの数とその合計を考えて、少し不安な気持ちになったりすることもある。けれど、大きなパーティーをするのは小さな頃だけなのだと考えると、それはかけがえの無い時期に思えるし、何より心から楽しんでいるこどもたちの笑顔は何にも代え難い。そして、今か今かと自分の番を心待ちにしている早生まれの息子の誕生日も、もうすぐそこだ。

平川さやか/プロフィール
フリーライター/フォトグラファー/メディアコーディネーター。
北海道札幌市生まれ。ファッション、インテリア、旅、キッズの分野を中心に、取材、撮影、執筆を手がける。夫と息子と白黒の猫とロンドンハムステッドに住んでいます。猫とお笑いと旅が好き。 ヴァージンアトランティックのブログVもよろしくお願いいたします。