第6回 小籠包・シャオロンパオ -台湾-

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小籠包・シャオロンパオ -台湾-

おいしいものが町じゅうにあふれる美食天国、台湾。訪れるたび、食べたいものの種類が、食べられる量のキャパをはるかに超えることを悔しく思う。たっぷり食べたらホテルに帰って、着脱式の予備の胃袋と付け替えられたらどんなにいいだろう……とありえない妄想が頭の中を駆け巡るくらい。

その台湾で、絶対に食べたい庶民派グルメの代表格といえば、小籠包。台北には、かのニューヨーク・タイムズ誌で世界の10大レストランにも選ばれたことのある名店があり、連日大行列の盛況ぶり。今回も、うっかり昼前頃に店の前に到着したら、どの順に案内されるのかわからないほどの人々が歩道にあふれかえっていて、諦めて翌日のおやつタイムに出直した。

さて、その小籠包、ご存知とは思うが説明しておこう。簡単に言えば、小麦粉で作った皮でひき肉のタネを包んで蒸したものだ。ただし、饅頭ではないので皮はあくまで薄く、中の具が透けて見えるほど。そして、中には肉だけでなく、たっぷりのスープが入っているのが特徴だ。どうやってスープを皮に包むのかというと、鶏ガラスープとひき肉を合わせて冷やし、鶏ガラから出たゼラチン質が煮こごりになって固まるのを利用するのである。それを包んでから蒸すと、皮の中でスープに戻るというワザだ。

このスープがおいしいことこの上ないのだが、当然のことながら、アツアツ! いくらおいしそうだから、そしてひと口大だからといっても、パクっといくとヤケドすることになる。おまけに私は猫舌ぎみ。でも、熱くておいしいうちに食べたい……。

そんな私のジレンマを解決すべく、現地の人が教えてくれた食べ方がある。レンゲに小籠包と黒酢と針生姜を乗せたら、皮の一部を箸で小さく破く。すると美味しいスープがレンゲにジュワッあふれ、黒酢と混ざる。これをフーフーして、ヤケドしないくらいになったところでスープをこぼさないように一気にレンゲの上のモノ全部を口に入れる。これでバッチリ! おかげでどんどん食べられてしまうのが難点だが。

これほど台湾グルメの象徴でありながら、実はこの小籠包、台湾料理ではない。実は、上海郊外の南翔という町で生まれたもの。上海きっての観光名所、豫園にある「南翔饅頭店」には、本場の味を求める世界各地の人が行列をなしている。日本人にはおなじみの「ショーロンポー」という読みも、「上海語」と呼ばれる上海地方の方言だ。

しかし、台湾における小籠包は、いまやすっかり地元の味として定着。広く庶民に愛されている。そして私は、台湾でも上海でも、それぞれにおいしい小籠包を味わえるシアワセに感謝しつつ、追加のセイロを注文するのである。

≪福子(ふくこ)/プロフィール≫
東京在住。アジアを中心に、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。「食」についてはまだまだ興味の尽きないアジアだが、もっといろんな味に出会いたい……ということで、当面の目標はアジア脱出!