第5回 ランチ事情

二人の娘がラオスのインターナショナルスクールに通い始めたころは、毎日お弁当を持たせていた。日本を離れて不安だろうから、せめて食事くらいは日本のものを、という思いからだった。しかし、お弁当を配達するついでに、キャンティーン...
LINEで送る

二人の娘がラオスのインターナショナルスクールに通い始めたころは、毎日お弁当を持たせていた。日本を離れて不安だろうから、せめて食事くらいは日本のものを、という思いからだった。しかし、お弁当を配達するついでに、キャンティーン(食堂)の様子を覗いてみると、ラオス料理独特の焼き鳥に似た香りがただよい、子供が好みそうな肉や魚中心のボリュームのある料理が並んでいた。そこで子供たちが学校に慣れてきた頃にキャンティーンの食事に挑戦させてみた。

たとえば、「チキンラープとスティッキーライス」はラオス料理のひとつで、鶏肉をパクチーなどの香草と炒めたものと蒸したもち米。ベジタリアン用には「パッタイ(焼きそば)と豆腐」。どちらにも100パーセントオレンジジュースがついてきて日本円で200円ほど。香草の匂いがやや強いのが気にはなるが、同じアジアの国、お米の国だけあって、味は悪くはなかった。低学年は、肉か野菜、高学年は、ウエスタン、ベジタリアン、アジアンと3つの中から選択できた。ちなみに、アジアンが「エビと卵の生春巻き」、ウエスタンは「ツナサンドイッチ」、そして、ベジタリアンは「豆腐バーガー」といった感じ。ベジタリアンのメニューには豆腐がよく使われており、上に書いた「パッタイと豆腐」のほかにも「野菜の豆腐包み」、「豆腐入り上海ヌードル」などもあった。

何度か試した後、子供もキャンティーンの料理を気に入ってくれたようなので、回数券を購入して利用させることにした。キャンティーンではラオス人スタッフが調理を担当しており、本場の味が楽しめた。PTAの仕事のついでに立ち寄る保護者の利用も多かった。スナックタイムにも、ラオスの麺料理「カオピャックセン(米粉のうどん)」「ミー(日本のラーメンに似ている)」などを食べることができた。子供でもさらりと食べてしまえるあっさり味で、約100円。好みでレモン汁、チリソース、生のもやし、揚げパン(1つ約20円)をトッピングできる。そして、南国ラオスならではの贅沢な飲み物がフルーツのスムージー。新鮮マンゴーをたっぷり使ったマンゴースムージーは60円なり。これは、教員がよく朝食代わりにコーヒーと一緒に利用していた。ほかにもクッキーやピザもあって、わが息子が「つけ」で買ってしまうほどのおいしさだった(知らないうちに担任の先生と一緒に買っていたようで、後日請求されてびっくり!)。グランドや屋内競技場を臨めるキャンティーンは放課後も利用できたので、子供の課外活動を見学しながら、親同士の歓談の場にもなっていた。

ラオスは開発途上国ということもあり、衛生面での不安や添加物の心配もあったが、慣れない食材の多い地で日本風の弁当を作るのに限界を感じていた私には、このキャンティーンはありがたかった。インターナショナルスクールに通う子供の多くが食生活の違いに戸惑っていたが、このキャンティーンのサービスによって、無理なく安全なラオス料理になじむことができ、旺盛な食欲を満たすことができていた。もちろん、ウエスタンなどは「ラオス風」ウエスタンではあったが、それを楽しんでいる風でもあった。ただ、長女は「ベジタリアン寿司」をさして、「あれが日本の寿司と思われたら困る」などと言って、一度食べたきり二度とは食べなかったのも事実だけれど。

村岡桂子/プロフィール
2007年から2010年までラオス滞在。2008年より、ウェブサイトや雑誌に寄稿。現在は山口県在住。小学校非常勤講師、翻訳家、フリーランスライター。