第1回 イスラム国家マレーシアと犬

マレーシアと聞いてどんなイメージをお持ちだろうか。
マレーシアを拠点とする格安航空会社エアアジアXが2010年にクアラルンプール-東京/羽田線を就航開始した当時は、マレーシアは気軽に行ける海外として日本でも大きな話題とな...
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マレーシアと聞いてどんなイメージをお持ちだろうか。

マレーシアを拠点とする格安航空会社エアアジアXが2010年にクアラルンプール-東京/羽田線を就航開始した当時は、マレーシアは気軽に行ける海外として日本でも大きな話題となり、また定年後の海外移住先No.1の国としても度々TVで取り上げられるようになった。最近では子どもの留学先としても注目が高まりつつあるという。

しかし、カラフルなスカーフ姿の女性からマレーシアの多民族国家のイメージを連想することはあっても、イスラム国家であることを意識する人はどれだけいるだろうか。

私にとってもマレーシアは「意外に近くて、意外に都会で、セカンドホーマーに人気の暮らしやすい国」そんなイメージに過ぎなかった。ところが、主人のマレーシア転勤の内示と共に、突如、居住国候補に浮上し、そして「イスラム国家」であることに直面することになる。それは我が家にとって、転勤を承諾するかどうかは、愛犬を連れていけるかどうかの一点にかかっていたからだ。

イスラム教では、犬は不浄な動物とされている。特に、犬の鼻(唾液)を触ってはいけない。もし触ってしまった時の清め方まで決められているらしい(現地の人の話では7回洗わなければならない、専用洗剤が必要という人がいる一方で、別に気にしない人もいるなど対応は様々なようだが)。また、日本のマンションのような集合住宅、コンドミニアムで犬を飼うことは条例で禁じられている。公園も犬の立ち入りは禁止だ。

こんなイスラム国家で、果たして愛犬と一緒に暮らせるのだろうか。

結論からいうと、我が家は一週間の検討の末、転勤を承諾した。愛犬の検疫制度を含む出入国、引っ越しに問題がなく、一緒に暮らせると判断したからだ。

ペットに対する考え方、接し方は人それぞれで異なっていい。しかし、我が家のように、ペットが家族として揺るぎない存在になっている人たちは確実に増えている。そんな人たちにとって、ペットと一緒に引っ越せるかどうかは大問題だ。お国が変わればペット事情は異なり、ペット連れ家族にとって海外渡航は心理的にもハードルが高い。海外移住先にマレーシアを考えているセカンドホーマー希望の方たちの中にも、きっとペットのことで不安や問題を抱え踏み出せない人たちがたくさんいるだろう。この連載は、安易に犬連れ海外渡航を勧めるものではないが、ペットを愛する方々への情報提供と共に、勇気づけになれば、また読み物として楽しんでいただければ幸いである。

わだ まきこ/プロフィール
早稲田大学大学院(教育学)修了後、渉外法律事務所、翻訳会社勤務を経て、出産を機にフリーランスで翻訳、執筆をスタート。愛犬の寝息を聞きながらの仕事は何より幸せ!? 2012年よりクアラルンプール在住。雑誌など、マレーシアネタに幅を広げて活動中。 マレーシア国立博物館日本語ボランティアガイド。ママ世代にとってはワーク・ライフ・バランスは永遠のテーマ。マレーシアでの生活からそのヒントを探っている。