180号/増本昌子

モントリオールで暮らすようになってから30年近くになるのですが、自分もそろそろカナダ人になってきたと思い始めています。というのもモントリオールの3月は、まだまだ雪に囲まれたままですから、家中の窓は暖房を入れだした晩秋から...
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モントリオールで暮らすようになってから30年近くになるのですが、自分もそろそろカナダ人になってきたと思い始めています。というのもモントリオールの3月は、まだまだ雪に囲まれたままですから、家中の窓は暖房を入れだした晩秋から閉め切ったまま。外出するにはスキーにでも出かけるごとく着込まなければなりません。陽気がよくなり春の花が咲き誇る日本の3月と思い比べて、冬の長さに飽き飽きする時期でした。

それがこのごろは、窓も全開できず、厚着の外出も相変わらずなのに、日が長くなり5時になってもまだお日様が見えることにうきうきし、雪の上を通ってくる風の冷たさも、なんとなく和らいできたことがわかるようになってきたのです。寒さの基準もカナダ風になり、真冬の-30度の世界から-10度前後の暖かい日が少しずつ多くなってきているのが楽しくなってきました。窓越しに見えるメープルの小枝にも、新芽のつぼみが元気に膨らみ始めていることも心を和ませてくれます。

3月は、またメープル祭りの季節です。土地の人の春を迎える気持ちがわかるようになったからでしょうか、町が開催するメープル祭りにも毎年行くようになりました。煮詰まったシロップを雪の上に流すと、みるみるうちに固まってメープルタフィーになります。それを、くるくるっとスティックにからませて空気を混ぜながら練っていると、水飴でおなじことをした子どものころを懐かしく思い出します。

(カナダ・モントリオール在住 増本昌子)