第4回 大人とレゴランド

 今回のエクストリームな事件は米国で起こったものではなく、カナダで起こったものだ。私の住む米国ミシガン州デトロイト郊外と近いカナダのウインザー市の男性が経験された出来事なので、取り上げたいと思う。

 レゴブロックは年齢...
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今回のエクストリームな事件は米国で起こったものではなく、カナダで起こったものだ。私の住む米国ミシガン州デトロイト郊外と近いカナダのウインザー市の男性が経験された出来事なので、取り上げたいと思う。

レゴブロックは年齢を問わずに人気のあるおもちゃである。米国との国境沿いにあるカナダ、オンタリオ州ウインザー市に住む63歳のジョンさんもレゴの大ファン。糖尿病や心臓の手術をしているジョンさんは室内でできる趣味として、5万ピースのブロックを使って様々なものの製作を楽しんでいた。

デンマークにあるレゴランドに行きたかったそうだが、健康上の理由から夢の実現は困難。今春、同じカナダのトロント市にレゴランドがオープンしたため、そこを訪れることにした。すでに成人した娘のニコールさんが同行した。

4時間近くのドライブでトロントにあるレゴランドに到着。しかし、ジョンさんはレゴランドに入ることができなかった。子どもの付添いではない大人は入館することができないという規則があったからだ。ジョンさんとニコールさんは施設のマネジャーに交渉しようとしたが、それもかなわず、そのまま帰宅の途についた。

レゴランド側は「子どもたちのためのアトラクションなので、訪れてくださる家族と子どもたちを守るための方針なのです」と回答。月に1度は大人だけが入館できる夜の時間を設けているとも付け加えた。

ジョンさんとニコールさんは地元のテレビの取材に応じて、さみしげな苦笑いを浮かべていた。「私は入館を拒否されてしまったのです」とジョンさん。同行したニコールさんは「しかたなく帰りました。帰ってきてから、ウェブサイトで規則を確認しようと思いましたが、なかなか見つかりませんでした。レゴが好きな人は全ての年代にいるのに…」と納得いかない様子だった。

「子どもたちが安心して遊べる」ということは重要なことだと思う。子どもをターゲットにした企業にとっても外せないポイントであるだろう。子どもの付添いである大人以外は入館できないという規則があることで、安心をおぼえる入場者もいるかもしれない。

しかし、知らない大人を不審な人と見なすことには、私は底知れぬ危なさも感じる。

谷口輝世子/プロフィール
デイリースポーツ社で1994年よりプロ野球を担当。1998年に大リーグなど米国スポーツ取材のために渡米。2001年よりミシガン州に移り、通信社の通信員などフリーランスとして活動。プロスポーツだけでなく、米国の子どものスポーツや遊び、安全対策、スモールビジネス事情などもカバーしている。著書『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)、章担当「スポーツファンの社会学」(世界思想社)。主な寄稿先 「月刊 スラッガー」(日本スポーツ企画出版社)、体育科教育(大修館書店)個人ブログ ツイッターKiyoko Taniguchi@zankatei