第4回 パワーリフティング・大堂秀樹さん

 
 
2020年東京オリンピック・パラリンピック開催が決定した。2012年に行われたロンドンパラリンピックで、多くのパラリンピアンや関係者らが、「東京での五輪招致が決まれば、障がい者スポーツをまだよく知らない日本人に知...
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ロンドン大会終了後、パワーリフティングの選手を撮影(左から大堂秀樹さん、宇城元さん、三浦浩さん)

2020年東京オリンピック・パラリンピック開催が決定した。2012年に行われたロンドンパラリンピックで、多くのパラリンピアンや関係者らが、「東京での五輪招致が決まれば、障がい者スポーツをまだよく知らない日本人に知ってもらえるきっかけになる」と、期待を寄せていたことを思い出す。東京での五輪開催が決まり、選手は何を思うのだろう。パワーリフティングの大堂秀樹さんに話を聞いた。

パワーリフティングは、下肢障害選手を対象にベンチプレスで持ち上げる重量を競う競技だ。バーベルをラックから外した状態で胸まで下ろして静止させ、再びバーベルを平行に押し上げるのだが、見ている観客は選手の底知れぬパワーに圧倒され、会場は割れんばかりの歓声と拍手に包まれる。ロンドン大会で大堂さんは、191kg(82.5キロ級)を成功させて6位に入賞した。

バーベルを押し上げる大堂秀樹さん「東京開催が決まったとはいえ、日本が抱える課題はたくさんある」。世界大会などで、大堂さんが他国の選手たちと話していて感じることは、障がい者スポーツに対する国の取り組み方の違いだ。例えば、メダル常連国のイランでは約1年もかけて強化合宿が行われるそうだ。他にも中国では国をあげて対策が進んでいて、トレーニングできる環境が十分に整えられ、約4ケ月にわたる合宿も行われる。

日本の選手は練習環境が違う中、強豪国と同じ舞台で戦わなければならない。もちろんメダルの期待もかかる。それでも大堂さんらは仕事をしながら練習を続け、海外遠征や試合に出る。パラリンピックの出場権を獲得しなければならないからだ。現在の自己記録は197キロ。日本のエースとして、着実に記録を伸ばし続けている。

ロンドン大会の閉会式で、国際パラリンピック委員会会長は「各国は福祉の分野ではなく、スポーツとして強化に取り組むべきだ」と話した。大堂さんの思いも同じだ。「選手たちはリハビリの延長としてではなく、競技として必死に頑張っています。開催までの7年間で、障害者スポーツをとりまく環境が一気に変わればいいなと思います」

ロンドン大会 パワーリフティング会場の試合前の様子

東京大会に出場したいかという質問に対し、「先を見すぎて目の前の石に躓いたら本末転倒なので、まずは2016年のリオデジャネイロ大会で結果を出せるよう頑張ります! 」と力強く話してくれた。日本でも各地で大会が行われているので、機会があったら皆さんにも一度観戦してもらいたい。きっと、その迫力に驚かされるだろう。

今までは、障がい者のスポーツ団体は厚生労働省、健常者のスポーツ団体は文部科学省と管轄が分かれていたために、パラリンピックの選手はナショナルトレーニングセンターの利用がままならないなどの問題があった。だが、選手強化事業の管轄が、来年度からようやく文科省に移管し一元化することが決定した。トップアスリートの支援を強化し、競技力を向上させるのが目的だ。ナショナルトレーニングセンターの利用だけにとどまらず、専門家の指導が受けられる環境が整備され、オリンピックだけではなくパラリンピックの競技力向上をめざすという。東京での開催が決まったことで、今後も様々な問題が改善されることを期待したい。

日本ディスエイブル・パワーリフティング連盟

山下敦子/プロフィール
映画字幕編集職を経て現在はフリーランスライター。カナダ滞在歴約5年。大阪を拠点に活動し、時々海外逃亡。人物インタビューやコネタ、旅、終活など幅広いジャンルの記事をウェブや雑誌に執筆。映画、お笑いが好き。2012年に書き始めた落語台本では、上方落語協会佳作受賞。