第1回 「世界一幸せな国」の正体とは!?

 10年前の私は、将来自分がデンマークに移住するなんて、まったく想像していなかった。私は東京の高円寺に生まれ育ち、高円寺でずっと暮らしていくものだと思っていた。自由を愛する人びとが集まる、ゆるやかな空気が流れる高円寺が好...
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10年前の私は、将来自分がデンマークに移住するなんて、まったく想像していなかった。私は東京の高円寺に生まれ育ち、高円寺でずっと暮らしていくものだと思っていた。自由を愛する人びとが集まる、ゆるやかな空気が流れる高円寺が好きだった。そんな私が、今、デンマークに移住して5年目を迎えている。デンマーク語を習得し、デンマークで子育てをしながら、デンマーク情報を発信する仕事をしている。そして、その現実に一番驚いているのは、おそらく当の私自身である。

この連載では、ひょんなことから北欧のデンマークという国に出会い、デンマーク研究に取り組み、デンマーク人と結婚し、デンマークに移住した筆者の物語を綴っていく。それは同時に、「世界一幸せな国」との出会いの物語であり、「世界一幸せな国」の体験記でもある。……そう。じつは、デンマークは「世界一幸せな国」なのである。幸福度については色んな調査が行われているが、代表的な報告書の1つに、国連の『世界幸福度レポート(World Happiness Report)』がある。2005~2012年にかけて155ヶ国以上を対象に世論調査を実施し、各国の国民の幸福度をランク付けした報告書だ。そのなかで「国民の幸福度が最も高い国はデンマーク」と2年連続で発表された。

いったいデンマークってどんな国なのだろう? なぜデンマークの国民の幸福度は高いのだろう? 実際、デンマーク人は本当に幸せを感じているのだろうか? だとしたら、デンマーク人は何に幸せを感じているのだろう? デンマークと日本の違いって何だろう? どうすれば「幸せな国」がつくれるのだろう? 云々……。デンマークという国に出会って以来、私はずっとこんな自問自答を繰り返してきた。よって、私の過去10年間の記録と回想は、「世界一幸せな国」のルポルタージュにもなり、エッセイにもなる。「世界一幸せな国」デンマークが、筆者の目にどのように映ってきたのか、6回分の連載にして紹介していきたい。

デンマークはどこまでも平らな国。約170メートルの最高地点から眺める風景。

連載を始めるにあたって、まずはデンマークについて簡単に紹介する。デンマークは北欧の一国である。スウェーデンとノルウェーの南側に位置し、国の南部がドイツ北部と陸続きになっている。440 以上の島々から成り立っており、面積は九州程度、最高地点は海抜約170メートル、小さくて平らな国である。また、人口は約558万人(兵庫県より少々多い程度)だが、養豚産業が盛んで、豚の数は約1230万頭に上る。つまり、デンマークには人口の2倍以上の豚が住んでいる。日本人に知られているデンマークの代表的なものといえば、玩具のレゴ、食器ブランドのロイヤルコペンハーゲン、童話作家アンデルセンなどだろう。最近では、デンマークの風力発電や、北欧デザインの家具や雑貨も注目されている。

だが、冬は日照時間が短く、言語(デンマーク語)はトーンが低めで抑揚がなく、国民は必要以上の笑顔を見せない……。そんな国が本当に「世界一幸せな国」なのか? 正直、私のデンマークとの出会いは、戸惑いの連続であった。

針貝有佳(はりかいゆか)/プロフィール
デンマーク・コペンハーゲン在住のライター兼トランスレーター。東京・高円寺生まれ。早稲田大学社会科学研究科で「デンマークの労働市場政策」について研究し、修士号取得。現在、デンマーク人の夫と娘と3人暮らし。現地のナマ情報・発見・感動をウェブや雑誌から発信するほか、翻訳やリサーチも手がけている。
ネット上で読める主な記事
地球の歩き方コペンハーゲン特派員ブログ
エキサイトのコネタ
SoDaTsu comデンマークの子育て事情
ANAコペンハーゲンガイド