第5回 フリーライター・荒木美晴さん

障がい者スポーツを長く追いかけているジャーナリストはそれほど多くない。今回は、長年に渡り「パラリンピアンの声」を届ける活動をしているフリーライターの荒木美晴さんに、障がい者スポーツへの思いを聞いた。

 
1998年の長...
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障がい者スポーツを長く追いかけているジャーナリストはそれほど多くない。今回は、長年に渡り「パラリンピアンの声」を届ける活動をしているフリーライターの荒木美晴さんに、障がい者スポーツへの思いを聞いた。

「MA SPORTS」http://masports.jp/

1998年の長野パラリンピックで初めて観戦したアイススレッジホッケーの迫力に心を打たれ、障がい者スポーツの魅力の虜になったという荒木さん。「昔からスポーツを見るのが好きだった。障がい者のためのスポーツ、健常者が競技するスポーツと分け隔てなく伝えたい」。そういう思いから、日本国内だけでなく海外の競技場にも足を運び、自身が代表を務める障がい者スポーツ専門サイト「MA SPORTS」ホームページなどで、障がい者スポーツを「スポーツ」という側面からとらえた記事を配信している

日本ではオリンピック競技でもマイナースポーツの集客には頭を悩ませている。ましてや障がい者スポーツの注目度はけっして高くない。取材を続ける彼女の説明によると、普段は国内最高峰の大会「ジャパンパラ」でさえも、報道陣がほとんどいないという。現在、日本各地でさまざまな大会が行われているが、入場無料であっても観客席にいるのは、家族や関係者ばかりで、競技会場が一般客で満席になることはないそうだ。

認知度が低いのは残念なことだが、障がい者スポーツには車椅子や義足、専用の用具を用いた競技など、さまざまな種目があるので、競技をもっと気軽に観戦し、障がい者スポーツならではの迫力やおもしろさを肌で感じてもらいたいというのが荒木さんの願いだ。そのためには、取材者としてパラリンピックなどを一過性の盛り上がりで報道するのではなく、選手たちの活躍を伝え続けることが大事だという。また、障がい者スポーツを見る観客も、野球やサッカーなどのメジャー競技を見るのと同じように、スポーツを見る目を養っていくことが大切だと荒木さんは続けた。

そんな彼女は、五輪招致が決定した日もいつものように、山口県で陸上の「ジャパンパラ」を取材していた。昨年10月には、アイススレッジホッケーのソチパラリンピック最終予選を取材するためにイタリアのトリノにも足を運んだ。「書くことで選手たちの生の声を伝えたい」という彼女にとっては、国内外問わず選手たちの活躍を発信し続けることは日常であり特別なことではないようだ。今後も、障がい者スポーツの魅力を追い続け発信していく姿勢は変わらないだろう。

前述した「MA SPORTS」のホームページは荒木さんをはじめ有志のフリーライターやカメラマンらで運営されている。一度チェックして選手たちの思いや会場の空気を感じてもらいたい。

山下敦子(やましたあつこ)/プロフィール
映画字幕編集職を経て現在はフリーランスライター。大阪を拠点に活動し、時々海外逃亡。人物インタビューやコネタ、旅などの記事をウェブや雑誌に執筆中。2012年に書き始めた落語台本では、上方落語協会佳作受賞。