第14回 人が生きる場所、ホスピス

今日も地球のどこかで、人が生まれ、死んでいく。生まれてきた者が死んでいくことは平等に与えられた“生”の在り方といえる。これほど確実に起こる人の“死”だが、実際には人の死に直面する機会は医療従事者でもなければ、そう多くはな...
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今日も地球のどこかで、人が生まれ、死んでいく。生まれてきた者が死んでいくことは平等に与えられた“生”の在り方といえる。これほど確実に起こる人の“死”だが、実際には人の死に直面する機会は医療従事者でもなければ、そう多くはないのではないだろうか。

セラピードッグの私たちもお手伝いしてます

余命短いことを宣告された人やその家族が、死に直面したとき、少しでも穏やかにことを受けとめ、限られた時間を楽しく過ごすことができるようにという思いで運営されている施設を訪ねた。セラピードッグトレーナーの資格を持つ知人が毎週、セラピードッグを連れ、ホスピスにボランティアに行くというので同行させてもらったのだ。

町から車でほんの10分ほど、森をバックに従えた静かで広々とした場所にひっそり佇んでいる。医師から余命半年以内と告げられた人が入所できるそうだ。「人が死んでいく施設ではなく、亡くなるまでの時間を有意義に過ごす場所よ」という言葉が印象的だ。

ふつうのお宅のリビングルームと変わらないアットホームな雰囲気

広大な施設のわりには、入所定員8人まで。部屋は全室、バス、トイレ、キチネット付き個室で、広さは400平方フィート (23畳ほど) なので、日本の2DK程度のアパートより広いぐらいだ。共有スペースには歓談用の部屋、ダイニング、ランドリールームなどがある。また誰もが利用できるリビングルームには暖炉やグランドピアノまであり、一見ゴージャスだが、よくあるアメリカの一般家庭のようだ。

土地、建物を含めた設備の総工費に5億円近くかかった施設というが、全ての資金が地元の企業や個人からの寄付で賄ってしまったというから驚きだ。看護師、栄養士など各種資格を持つ常任職員はもちろんいるが、常時150人ほどのボランティアが登録しているため、施設運営費がかなり節約できているという。入所費用はメディケア(注)などの保険も適用できるそうだ。

「ボランティアは、特別のことなんかできなくてもいいの。誰でも自分のできることをすればいいのよ。但し、ボランティア登録するためには、必要な講習を受けてね」とのこと。

庭の手入れもボランティアに任せなさい!

広大な敷地の芝刈り、花壇や庭の手入れはもちろん、入所者のヘアーカット、話し相手、お料理やおやつ作り、掃除、洗濯、音楽演奏まで、あらゆる助っ人の力が、ホスピスを支えているという。いつか自分や家族もお世話になるかもしれないというお互いさまの気持ち、自分のできることを社会に還元する喜び……ホスピスははつらつとした場所に見えた。

(注)米国の高齢者および障害者向け公的医療保険制度

Woodland Hospice

椰子ノ木やほい/プロフィール
ホスピスときいて、ちょっとネガティブな印象を持って出かけたものの、行ってみるととってもステキな場所だった。ボランティア協力のみならず、運営資金を集めるために定期的に寄付金集めのイベントも催されている。「地域に必要なものなら住民パワーでなんとかしちゃおうよ」という姿勢に脱帽!