第11回 鶏のチョコレートソース  ― Mole pobulano ― メキシコ

「メキシコにはさぁ、鶏をチョコレートで煮込んだ料理があるらしいよ」「ええっ!?」
食いしん坊ナカマとチョコレート談義で盛り上がっていたときに飛び出したその言葉に、私は耳を疑った。「お、食いついたな」とニヤリとする友だち。...
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鶏のチョコレートソース ― Mole pobulano ― メキシコ

鶏のチョコレートソース ― Mole pobulano ― メキシコ

「メキシコにはさぁ、鶏をチョコレートで煮込んだ料理があるらしいよ」「ええっ!?」

食いしん坊ナカマとチョコレート談義で盛り上がっていたときに飛び出したその言葉に、私は耳を疑った。「お、食いついたな」とニヤリとする友だち。私のアタマの中は、はてなマークがいっぱい!

チョコレートって…あの、チョコレート? 煮るの? 鶏肉を? えーと、甘いの? そもそも、料理なの? そして、究極のはてなマークは……それって、おいしいの?

いくらチョコレート大好きな私でも、イメージだけだとちょっとひるむ。じゃあ試しに食べてみよう! とて……メキシコは思いつきで行くには遠すぎる。ということでまずは調べてみたら、ふむふむ、なるほど。

料理名はモーレ・ポブラノ。モーレはソース、そしてポブラノは発祥の地である「プエブラの…」という意味らしい。つまりこれだけだと「プエブラのソース」という意味で「名古屋の味噌ダレ」などと同じで、鶏肉の料理かどうかわからない……とは思ったが、今や「モーレ」と言えばこのソースのことを指す代名詞となるほどにポピュラーで、このソースを使う料理といえば、鶏肉を煮込んだコレ! ということらしい。ちなみに「ポジョ・デ・モーレ」「モーレ・ポブラーノ・コン・ポジョ」(ポジョ=鶏肉)とも呼ばれる。

そして、このモーレ・ポブラノにチョコレートが入っている。ただし、使うのは砂糖やミルクの入っていないハイカカオチョコレート。タマネギやトマトをベースにチリなどの様々なスパイスを加えたソースとのことなので、カカオをひとつのスパイスと考えれば、ひるむほどでもなさそう……と思えてきた。

さて、トライする勇気が出てきたところでいよいよ実食! と選んだのは広尾にあるメキシコ料理店ラ・ホイヤ。広尾といえば、各国大使館が多いことなどから、時間帯によってはホノルルのメインストリートを歩くより日本人に遭遇する率が少ない街。本場の味が期待できる。実際、その日もお客さんの半分以上はノンジャパニーズ。

ちょっと時間がかかるとのことだったので、予約をしておいた「モーレ・ポブラノ」が満を持して登場! 写真をご覧いただければおわかりのとおり、けっこう地味である。が、複雑な味わいのソースはたしかに淡白な鶏肉にピッタリでおいしい! たっぷりソースをからめて食べると、後味にふわっとカカオが香るという印象で、それほどチョコレート、チョコレートしているわけではない。

このモーレは日本でも輸入食材店で完成品が手に入るようなので、いつもとひと味違った鶏肉料理を食べてみたければ、ぜひ!

メキシコ料理 ラ・ホイヤ

凛 福子(りん ふくこ)/プロフィール
東京在住。日本とアジアを中心に世界各地を、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。残暑は予報ほど厳しくなく、空も風もすっかり秋の気配。店頭に秋の味覚が並びはじめてワクワク……食欲の秋到来で本領発揮。楽しみ~!