第15回 銃が少しずつでも無くなることを願って

2014年もおしせまった 晦日、またもや悲劇が起こった。(※1)2歳の坊やが母親を射殺したという事故だ。米国では、「銃好きな大人」のずさんな管理による事故が多発している。どう釈明しようと幼児に罪はない。誰もが簡単に銃を持...
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2014年もおしせまった 晦日、またもや悲劇が起こった。(※1)2歳の坊やが母親を射殺したという事故だ。米国では、「銃好きな大人」のずさんな管理による事故が多発している。どう釈明しようと幼児に罪はない。誰もが簡単に銃を持てる社会だけに、こうした事故は止まらない。運が悪かったと諦めるだけでいいのだろうか?

日常において銃の存在を意識する必要のない日本で生まれ育ったわたしの目から見ると、母親が「殺りく」の道具である銃をバッグに入れ、子どもたちの手を引きスーパーで買い物するという事実に驚いてしまう。なんのためらいもなく、まるでスマホレベルの扱いようだ。もちろん、彼らに言わせれば護身の道具と表現するだろうし、自衛の権利を主張するのだろう。キャベツや肉を買う気軽さで銃を購入することが当たり前。「銃は家にあるもの」という感覚を身につけている人々が暮らす国だということを事件が起こるたび再認識する。

レジ横の雑誌売り場には、「ドッグワールド」と並んで銃の購買意欲をかきたてそうな雑誌がところせましと並んでいる。

今回の事件が起こるほんの少し前のこと。友人から「“クローガー”はガン・フレンドリーだからボイコットしなくっちゃ」というセリフを聞いたばかりだった。クローガーとは、わたしもよく行く、近所のスーパーのことだ。米国の食料雑貨販売では、ウォルマートに継ぐ規模を誇り、全米に約2640店舗を展開している。“Gun-Friendly”(ガン・フレンドリー)とは、店内での銃器の所持を認めているという意味だ。

銃所持の扱いについては各州法のもと、団体、自治体、学校など独自にルールを設けていることが多いが、クローガーは、米国社会が銃所持を法で認めている限り、その法に則るという構えを公式に発表している。(※2)つまり、スーパーで銃を持ちながら買い物することを認めているのだ。一方、いくら法律で銃所持が認められているからといって、“Gun-Free”(ガン・フリー)と、銃器の持込み禁止を謳っている店もある。

2012年コネチカット州サンデーフック小学校での、児童を含む26名の死者を出した銃乱射事件は記憶に新しいだろう。それがきっかけで生まれた銃規制を訴える活動グループ(※3)は、クローガー店内での銃所持に対するポリシーに異を唱え、不買運動を促したり、ツイッターで#GROCERIESNOTGUNSというハッシュタグをつけて消費者としての意見を店に伝えようという呼びかけを続けている。(※4)

銃器所持の是非については常にバトルが繰り広げられている米国社会だが、わたしは、所持の権利を主張するよりは、銃社会に警鐘を鳴らす活動を支持したい。

(※1)事件を伝える記事 CNN AFP 日経
(※2)店内での銃所持に関するポリシー(英語)
(※3)Moms Demand Action for Gun Sense in America
(※4)クローガーに対しての呼びかけ行動(英語)

椰子ノ木やほい/プロフィール
97年家族でサモアに移住後、2001年より米国・ミシガン州在住。
自衛の重要性もわかるが、「やられる前に撃ってしまえ」と子に教えなければならない社会であっていいはずがない。命を生み育んできた大人として、マジで「人を殺すための武器はこの世から失せてほしい」と願っている。違いを認め合い仲良く暮らすことのたいせつさを世界じゅうの大人が子どもたちに教えていけばいつかは、殺し合いは無くなると信じている。こんなこと言うと、「頭がお花畑?」という人もいるけれど、少し遡れば日本でも剣を振り回していた時代があったが今はないではないか。そう思えば少しは希望が持てるのではないだろうか……?