第13回 フムス ― حُمُّص ― 中東諸国

 
タイトルの料理名と写真を見て、すぐにこれが何かわかった人は、ヘルシー志向の料理への関心が高い人でしょう。フムス、あるいはホンモスと呼ばれるこの料理は、中東の各国でポピュラーな豆料理。今回、タイトルの国名をひとつの国に...
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フムス ― حُمُّص ― 中東諸国

タイトルの料理名と写真を見て、すぐにこれが何かわかった人は、ヘルシー志向の料理への関心が高い人でしょう。フムス、あるいはホンモスと呼ばれるこの料理は、中東の各国でポピュラーな豆料理。今回、タイトルの国名をひとつの国にしなかったのは、イスラエルとレバノンの間で本家争いがあり、それぞれの国が特大のフムスを作ってギネス記録に挑戦して記録破り合戦をしているから。もっとも、この2つの国だけでなく、近隣の中東諸国ではどこでもよく食べられているという。

フムスはガルバンゾという豆と、練りゴマ、ニンニク、オリーブオイル、レモン汁などを混ぜてペーストにしたもので、ピタというナンに似たパンや野菜などにつけて食べる料理。さっぱりしているが、豆が原料なのでけっこうお腹にたまる。

ちなみにガルバンゾは日本ではひよこ豆と呼ばれ、英語でもChick pea、そして、中国語でも鶏児豆という名のようで……てっきり黄色くて、ちょこんととんがりがあるその形がひよこに似ているからだと思っていた。ところが、語源となったラテン語”cicer”から、フランス語、英語への変遷の過程でなんらかの間違いでChickに変わってしまったという説もあるようだ。

ガルバンゾには大豆と同じく女性ホルモンに似た働きをするイソフラボンが多く含まれ、さらにビタミンBやカルシウム、亜鉛などミネラルも豊富。さらに、ゴマやオリーブオイル、ニンニク、レモン汁と、どれもビタミンや食物繊維など特に美容と健康を心がける女性たちに注目されるのはうなずける。セレブたちのお気に入りだとか、アメリカの人気ドラマの映画バージョン“SEX and the CITY 2”に登場するなど、話題となり欧米では近年女性を中心にブームに。また、動物性の食品を含まないため、ベジタリアンにも人気。

日本ではまだ一般的とは言いがたいが、都内にはいくつか中東料理の専門店があり、フムスも食べられる。実はどこでどんな状況だったかよく覚えていないが、私はフムスを食べたことがあった。しかし、モソッとした豆のペーストであまりおいしいとは思えず、以来さして注目していなかったのだ。

ところが、この春、本来の目的とは別にちょっとついでに立ち寄ったアブダビで食べたフムスが絶品だった。日本でも本場の味を守っている店に行けばきっとおいしいフムスが食べられるに違いない! ということでインターナショナル(←死語?)な街、六本木で20年近く営業するイラン・アラブ料理専門店に足を運んだ。

スタッフは全員外国人、というこの店は、もちろん料理にはハラールフードを使用。そして肝心のフムスは、やっぱりしっとりクリーミーな本場の味。ランチタイムにはビュッフェスタイルでさまざまな料理を味わえるのも魅力。夜は単品やコース料理のほか、レバノンのビールやワイン、スパイス入りのアラビアンコーヒー、シーシャと呼ばれる水タバコなども揃っているので、つかの間のアラビアンナイトが楽しめる。

イラン・アラブレストラン アラジン

凛 福子(りん ふくこ)/プロフィール
東京在住。日本とアジアを中心に世界各地を、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。この春に久しぶりのヨーロッパの旅を満喫。帰りにストップオーバーで寄ったアブダビで、フムスをはじめ本場のアラブ料理とモスクなど美しい建築に感激!もちょっと予備知識をつけてから中東再訪してみたい~。