第3回 所変われば数字の書き方も変わる

文字を習い始めるということは、数字も習い始めるということ。日本もポーランドも同じアラビア数字を使っているのだから、数字の書き方に困ることはないだろうと思ったら大間違い。実は微妙に異なる数字がいくつかあるのだ。

 
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文字を習い始めるということは、数字も習い始めるということ。日本もポーランドも同じアラビア数字を使っているのだから、数字の書き方に困ることはないだろうと思ったら大間違い。実は微妙に異なる数字がいくつかあるのだ。

「7」を書く練習。真ん中に入れる横線のバランスがなかなか難しい

例えば「7」。日本では左側に縦線が入るが、ポーランドではそれがなく、代わりに右の縦線の中ほどに短い横線が入る。「1」に至っては、日本ではまっすぐに一本線を引くだけでもよいのに、ポーランドでは左にしっかり斜め線をつけ足さなければならず、人によってはV字が逆立ちしたような形の「1」になることも。

私はポーランド語を勉強し始めてから20年以上も経った今でも、数字はやはり日本式に書いてしまう。長年書きなれたクセというのはなかなか抜けないものだ。

10ズウォティの童話の本、5ズウォティの粘土、4ズウォティのクレヨンを合わせるといくらになるか、式を作って答えを導き出すという計算問題。買い物の感覚で学べるので実用的

数字の書き方が違う、ということへの戸惑いは娘にもあったようだ。なにしろせっかく日本で習ってきた数字を練習しなおさなければならなかったのだから。それでも子どもは順応性に優れているもので、今では逆に日本から持ってきた計算ドリルもポーランド式に書き込んでいる。

こちらの算数の教科書を眺めていていいなと思ったのは、一桁の数字を習うだけでお金を使った計算問題ができることだ。お金は日常生活に欠かせないもの。日本ではお金の桁が大きいので、少なくとも2桁以上の数字が分からないと計算が難しいが、こちらでは100ズウォティ(2016年6月現在1ズウォティ=約28円)といえばもう大金。日常で身近な食べ物を例にした「2ズウォティのパンと3ズウォティの牛乳を買いました。あわせていくらでしょう」などという問題なら、1年生でも解くことができる。とても役に立ち、買い物遊びが好きな子どもたちには楽しく学習できるだろう。(ちなみにズウォティの下にグロシュという単位もあるので(1ズウォティ=100グロシュ)、それも合わせた計算となると日本での買い物よりもややこしくなってしまうのだが……)

左ページ中央にあるのは、定規を使って積み木の汽車の長さを比べる問題。日本であれば積み木の色や形の組み合わせで答えを出すところだろうか

興味深い違いも見つかった。長さや量に関する問題だ。日本の教科書ではものの大きさを調べるのに、まずはマス目や容器を使って比べてみる。ところがポーランドでは最初から定規や計量カップが登場し、cm(センチメートル)、ℓ(リットル)という単位を学習。例えば鉛筆の長さが2センチと5センチではどちらが長いか、水の量が1リットルと3リットルではどちらが多いか、というように比べるのだ。合理的といえば合理的だが、柔軟なものの考え方を養うには、まずは日本風の比べ方を試してみた方がよさそうに思われた。

娘はこれから徐々に複雑な問題に取り組んでいくことになるだろう。しかし国語と違い、算数は世界共通。二つの国の親を持った“特権”を利用し、自分に合った解き方を臨機応変に使い分けて、上手に勉強して欲しいと思う。近いところでは、2年生で習う掛け算の九九は日本語で覚えさせた方が簡単そうだとひそかに考えている。

スプリスガルト友美/プロフィール
ポーランド在住ライター。数学が苦手な夫は高校生の時、「将来子どもの数学は誰が見てあげるの」と先生から言われて「妻に見てもらうから大丈夫です」と答えたとか。そして今、その妻となった私も実は数学が得意ではない。当面の悩みは、いつ頃まで娘の質問に答えてあげられるかということだ。中学の勉強まではなんとか見られると思うのだが果たして……?ブログ「poziomkaとポーランドの人々」