第14回 学習とは繰り返すこと

解剖生理学のクラスは、週に2回行われる講義と1回のラボラトリーに出席し、それぞれテストを受ける。そして合計点で成績が決まる。講義のテストは選択問題で、ラボは記述式だった。

講義の授業は大講堂で行われ、名前の順で席が決まっていた。医療関係の仕事を目指す学生が、まず取らなくてはならないクラスなので大世帯だった。出席を取る専門の人がいて、チェックしていた。ただ、休んでいる人はとても少ないような気がした。みんな真剣に先生を聞いていたと思う。

「僕は呼吸療法士になりたいんだ」

「私は超音波技師を考えているのよ」

目指すコースは様々だった。私は1回で単位を取れるように、必死だった。

先生のプレゼンテーションは、生徒がアクセスできるウェブサイトからダウンロードできた。私は全て印刷し、分からない単語をチェックしてからクラスへ行くようにしていた。ある日、ハーマー先生は、最近の生徒は恵まれていると言った。

「私が学生だった頃はね、ひたすら先生が言っていることを聞いてノートしなくちゃダメだったのよ。先生によっては、たまに黒板に書くだけで、ずーっと話しているだけだったりね」

私たちは、もっと甘やかされていた。毎回、講義を録音したCDをクラスの直後に買うことができたからだ。結構売れていたと思う。もちろん、私は必ずゲットしていた。ハーマー先生がある日、授業でこう説明していた。

「学習とは繰り返しなのです。つまり何回も繰り返すことで、覚えるのです」

これを聞いてからは、CDを聞きまくることにした。運転中はもちろんのこと、料理をしながらもずっとCDを流し続けた。覚えられない部分を書いたりコピーして、家中に貼って見るようにもした。学習だけではない。スポーツや芸術だって、どれだけ時間と情熱を費やしたかで違ってくるのではないか。

さらにエクストラクレジットと呼ばれる、加点されるシステムもあった。コンピューターラボへ行き、解剖生理学のプレゼンテーションを見たりすると、ポイントがもらえるので、これも必ずやった。毎回、テストの結果は張り出された。もちろん学生の名前でなくID番号でだが。どこが間違ったかを見たければ、先生のオフィスへ来るように言われた。必ずミスったところをチェックし、先生にどうしてかを説明してもらった。

やれることは全てやった。このクラスを無事に終えると、私を助けて励ましてくれたスタディーグループのみんなを家に招待してお祝いした。久々にいちごのショートケーキを焼いて、ふるまった。そして、それぞれが自分の目指したコースに進んでいった。

伊藤葉子(いとうようこ)/プロフィール
ロサンゼルス在住ライター兼翻訳者。米国登録脳神経外科術中モニタリング技師、米国登録臨床検査技師(脳波と誘発電位)。訳書に『免疫バイブル』(WAVE出版)がある。