第15回 気がつけば、息子の進路を決める時期

息子と二人で日本に帰国し、実家の近くにある発達障害児を受け入れる高校への入学が決まり、ホッとしたのが2018年の4月。時間はあっという間に過ぎ、気がつけば高校3年生、進路を決める時期である。

息子は学校には毎日ちゃんと通っているが、コミュニケーション障害のせいか友達ができず、授業が終わればまっすぐ帰宅し、土日はずっと家にいて、パソコンやスマホをいじっている時間が長い。

いつの頃からか、パソコンで3D画像やロゴなどを作るようになり「高校を出たらアメリカのゲーム会社で働く」と言い始めた。

「日本の専門学校で技術を学んで、日本のゲーム会社に就職して実績を重ねてから、アメリカの会社にトライしたほうがいいよ」と常識的なアドバイスをすると、息子も納得する。

まずは東京と神奈川県のゲームクリエーター学科のある専門学校に片っ端から資料請求をしたが、神奈川県の片田舎から東京への通学は厳しいかも、と横浜の専門学校に絞る。

今年はコロナ禍のせいで従来なら春休みあたりから始まる学校説明会やオープンスクールが軒並み延期になり、6月20日に初めて横浜の専門学校のオープンスクールへ。そこでゲームクリエーター学科にはプログラマーコースとCGデザインコースがあることが分かり、どちらがいいのかを息子に聞いてみるが、答えは「うーん、わからない」。

試しに息子がフリーソフトで作った3D画像を専門学校の先生に見てもらおうと、次のオープンスクールにパソコンを持参する。すると、「こんなこと(3DCG制作というものらしい)がもうできるんだね」と感心され、CGデザインコースを勧められる。

そういえば、こういうソフトの使い方はどうやって覚えたのだろう?高校で教わったとは聞いていないし。息子に尋ねると「YouTubeで覚えた」。教室などに通う必要もなく、身に付けたいノウハウはYouTubeで学ぶ、そういう時代なのだろう。

間もなく、息子はAO入試なる私たちが高校生の頃は存在しなかった入学制度で専門学校を受験する。面接が肝になるらしいので、その練習を始めているところだ。

江草由香(えぐさゆか)/プロフィール
編集者・ライター・通訳・翻訳者・イベントコーディネーター。
立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。フランスでPRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発フリーペーパー『Bisouビズ』を創刊。現在パリ・フランスとアート&モノづくりをテーマにしたサイト『BisouFranceビズ・フランス』の編集長。個人ブログは『湘南二宮時々パリ』