269号/原田慶子

新型コロナウイルスで始まった2020年も、残り1か月余りとなった。コロナ禍による負の面は数えきれないほどあるものの、その中で新しく生まれた生活習慣も少なくない。

私は自宅で簡単な筋トレやストレッチをするようになった。コロナで外出を控えているため、まともに歩くのは2週間に一度の買い出し時だけ。「このままじゃ将来骨粗しょう症になりかねん……」という理由で始めたのだが、今ではすっかりこれにハマっている。

ショッピングカートを引きずって買いだめする貴重な食材を無駄なく使い切るよう、ノートに昼食の献立を書き出すようにもなった。日々のラインナップを考えるのは、パズルを組み合わせているようで意外と楽しいものだ。一か月間はメインディッシュが重ならないよう工夫しているので、幸いながら献立に飽きることもなく、外食ができない不便さもあまり感じられない。おかげで以前より食事のバランスがよくなった。

もうひとつ気に入っている我が家の新習慣は、食事の前に主人と一緒に感謝を捧げるようになったことだ。「神様、ありがとう。(天国の)両親たち、ありがとう。そしてだんな(主人は私に)ありがとう。さあ一緒に食べよう、頂きます!」日本語だと恥ずかしいセリフも、スペイン語なら違和感なく唱えられる。

ペルーでは新型コロナウイルス感染症が爆発的に拡大し、10万人当たりの死者数が一時世界ワースト一位になった。国内の医療システムは早々に崩壊し、患者が待合室や駐車場のベンチで横たわる光景など、さながら野戦病院のような有様が毎日のように報道されていた。

日本なら十分助かる程度の患者が、医療用酸素の供給不足で次々と死んでいく。ペルーで罹患したら終わりだという切羽詰まった感覚があるからこそ、今日も無事でいられることに感謝の念を抱かずにはいられない。食事のたびに「あぁ今日もご飯が食べられるね、生きててよかったね」と素直な気持ちを互いに伝え合える時間がこの先もずっと続きますように。

(ペルー・リマ在住 原田慶子)