198号/増本昌子

今年の夏、地球の重力を一人で背負っているようにくたびれて立っていられなくなりました。そのうち、おなかは盲腸の時のように痛くなり、おかしいなあと思っているうちに、痛みのあるところを中心に皮膚がしびれだし、まるで革製の鞄を撫でているような感覚に襲われたのです。あわてて掛かりつけの医者に電話したところ救急クリニックに行くようにと言われました。

予約なしですから2時間ほど待たされましたが、見てくれた若い女医さんから、帯状疱疹かもしれないと診断されました。痛み止めと帯状疱疹用の薬を処方するから、まず痛み止めを飲み、もしも2、3日後に湿疹がでたら帯状疱疹用の薬を買いなさいと2種類の処方箋を渡されました。

さっそく薬屋に行き痛み止めの薬だけを頼んだところ、薬を処方された理由を聞かれたため、これこれしかじかと説明し痛み止めだけが欲しいと伝えると、「帯状疱疹の薬は抗生物質ではなく単にウイルスを殺すだけなので飲んでも体に悪影響はない。万一、帯状疱疹の場合は、72時間以内の早期治療が必要なのですぐ飲み始めるほうがいい」と2種類の服用を勧めてくれました。

すでに皮膚がマヒし始めて2日目ですから、さっそく両方の薬を飲み始めました。案の定、翌日から皮膚が赤く膨れだしたのです。ドクターと薬剤師のタイムリーなアドバイスのおかげで湿疹も少なく蚊に刺されたように膨れるだけで、水膨れにもならずに済みました。あれから4か月経ちますが、まだしびれと痛みが残っています。ウイルスに破壊された皮膚内部の神経細胞が回復するまで半年から1年は痛みが続くようです。

友人の話を聞くと意外に多くの人が掛かっている病気で、バカンス中に罹りひりひりするのは日焼けのせいだと勘違いしたり、頭が痛いのは風邪と思い込んで治療が遅れた人もいます。皆さんも、理由のないしびれを感じたらすぐ診察を受けてくださいね。

(カナダ・モントリオール在住 増本昌子)