160/椰子ノ木やほい

ミシガンもこのところ炎天が続いている。私は暑さにはわりと強いが、11歳になる我が家の“タマ”が夏バテにやられてしまった。といっても猫ではない。我が家には車が複数あるので、ポチ、ハチ、シロなどと、車に名前を付けている。タマは11年落ちの我が家のバンのことで、エアコンがまったく効かなくなってしまった。スイッチを入れると冷たくないどころか熱風が吹き出てくる。家族6人で旅行することになったので、8人乗りのタマで行かなければならない。

大学生の息子にオートパーツショップでスプレー式のエアコン用補充ガスを購入し、注入するよう指示した。説明書と格闘しながら補充は成功したものの、エアコンの風はまったく冷たくならない。結局、車底を走るパイプの一点からガスが漏れているのを発見。仕方なく修理工場へタマを連れて行った。

事情を説明すると、「破損しているパイプの交換に千ドルぐらいはかかるだろう」とのこと。「エエエッーーー」と心の中で叫んだ。「そんなにかかるんですか。ちょっと考えます」といってその場は退散した。といっても旅行は3日後に迫っている。6人以上乗ることのできる車を今から買いに走るか、千ドルかけて修理するか、「アヂイ、アヂイ」といって一家6人汗だくになりながら旅するかのどれかを選択しなければならない。

短距離ならば “汗だく”を選ぶところだが、高速道路を往復2000km も走る旅なのだから、ちょぃと辛い。厳しい選択を強いられ、ダメ元で別の修理屋に聞いてみた。親切なオーナーがガス漏れ箇所を確認してくれた。ダメージのあるパイプ全体を交換すれば、費用がかさむが、穴の開いている箇所だけ切り取って新しいパイプと入れ替える方法なら、240ドルぐらいだという。

「安い!」

先に千ドルと聞いた後なので痛いながらも安い気がしてしまう。修理をお願いした。タマは夏バテから解消され、エアコンのスイッチを入れると凍るような冷たい空気で車内を満たしてくれるようになった。さて、これで久しぶり(げっ!7年ぶり……)の一家6人揃っての家族旅行に出かけられる。

今回は、いろんな意見を聞くことの大切さを痛感した。もし、医師に深刻な病気を宣告されたら、かならずセカンドオピニオンを求めようと心に決めた。

では行ってきます。(アメリカ合衆国・ミシガン州在住 椰子ノ木やほい)