第1回「銃」はどこまで規制するべきか

昨年12月、米国コネティカット州の小学校で銃の乱射によって、児童20人を含む26人が射殺された。

米国ではハンティングはもちろん、護身のために銃を所持する人が少なくない。この事件直後には大勢の人々が銃所持の規制を求める一方で、全米ライフル協会が「武装した警官を各学校に配置するべきだ」と会見。1月にはオバマ大統領が銃規制強化案を発表したが、議会には規制反対派も存在する。

そんななか、全米の各学校では校内を安全に保つため、懸命の努力が続けられている。銃を持った不審者の乱入を想定して、教室の出入り口にカギをかけ、照明を落として教室の片隅に隠れる訓練や、施錠した校門の内部から保護者が訪問者を確認するなどが行われている。

しかし、「安全対策」とはほど遠いと思われる極端な対応もある。

ペンシルバニア州にある小学校で、キンダーガーテン(日本では幼稚園年長児)の女児が下校するためにスクールバスを待っていた。女児は、引き金をひくとシャボン玉が出てくるキティちゃんのバブルガンについて友達とおしゃべりしていた。「私があなたを撃って、あなたが私を撃つの。いっしょに遊ぼう」などと言いながら遊んでいたという。

これがなんと一大事に発展。女児は校長室に呼び出され、「威嚇」にあたるとして10日間の出席停止処分を受けた。両親は弁護士を雇い、学校からの謝罪を求めているという。

キティちゃんだけではない。ブロックのレゴでも似たような事件が起こっている。

マサチューセッツ州の5歳児が学校でブロックの銃を作ったところ、学校から再び学校で銃を作ったら「空想上の武器」を所持したという理由で10日間の出席停止処分にするという警告を受けたという。

また、コネティカット州の銃撃事件以前の出来事だが、聴覚障害を持つ3歳児が自分の名前を手話で表現するため、手指で銃の形を作ったところ、学校側から変更を求められたというものもある。後になって、学校側は「どの生徒にも変更を求めたことはない」と発表した。

「友達や他の人を脅かすことはいけないこと」ということに異論を唱える人はいないだろう。しかし、筆者には、キティちゃんとレゴで出席停止処分になることのほうが、よほど怖いことのように思えるのだけれども……。

谷口輝世子/プロフィール
デイリースポーツ社で1994年よりプロ野球を担当。1998年に大リーグなど米国スポーツ取材のために渡米。2001年よりミシガン州に移り、通信社の通信員などフリーランスとして活動。プロスポーツだけでなく、米国の子どものスポーツや遊び、安全対策、スモールビジネス事情などもカバーしている。著書『子どもがひとりで遊べない国、アメリカ』(生活書院)、『帝国化するメジャーリーグ』(明石書店)、章担当「スポーツファンの社会学」(世界思想社)。主な寄稿先 「月刊 スラッガー」(日本スポーツ企画出版社)、体育科教育(大修館書店)個人ブログhttp://kiyoko26.hatenablog.com/
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