第13回 オリンピックのとばっちり/ポーランド

先日、ソチ冬季オリンピックが閉幕しました。私の住むポーランドは、金メダル4つ、銀メダル1つ、銅メダル1つというこれまでにない快挙で、歴史にも心にも残るオリンピックとなりました。

その金メダリストのうちの一人がノルディックスキー距離女子10キロクラシカルに出場したユスティナ・コヴァルチク(Justyna Kowalczyk)選手です。彼女は前回のバンクーバーオリンピックでも金銀銅の3種類のメダルを獲得しており、今大会でも大変な期待がかかっていました。しかし、競技数日前の診断で、大会前から足を骨折していたことが判明。メダルどころか、体調を心配する声が上がり、出場も危ぶまれました。そんなポーランド中の不安を吹き飛ばすかのように、当日、コヴァルチク選手は素晴らしい走りを見せ、見事金メダルに輝きました。その日はポーランド中が喜び、ポーランド人であることを誇りに思ったに違いありません。

その一方で、喜ばしいはずの同郷人の活躍を恨んでしまいそうなニュースがありました。

ポーランド南部のノヴィ・ソンチュ(Nowy Sącz)在住のウカシュ(Łukasz)さん。昨年末、左足の指を骨折し、医師から2月22日まで2か月間の自宅安静を言い渡され、会社に提出する証明書も出してもらいました。

と、ここまではよかったのですが、なんとその後2月12日国民保険庁(ZUS)から呼び出されてしまいます。そして、そこでいわれた言葉は信じられないものでした。

「ユスティナ・コヴァルチク選手が骨折した足であれだけ見事な走りをしたのだから、あなただって会社ぐらい行かれるでしょう」

ZUS担当の医師は、ウカシュさんの折れた足には目もくれずにこういったそうです。

ポーランドでは、医師の診断で欠勤を余儀なくされる場合、欠勤中の給与の何割かをZUSが負担することになっています。仮病ではないのを確認するために、ZUSが抜き打ちで病状を調べることがある、というのは私も聞いたことがあったのですが……。

実はウカシュさん自身、骨折しているとはいえ、日常生活にそれほど支障をきたすわけでもなく、会社を休むよりも働いていたほうが金銭的には助かるようなのです。しかし、足の状態を見もせずにこのような発言をしたZUSに不信感を抱いたのも無理はありません。

この後、ウカシュさんはZUSの指示通り仕事に復帰しましたが、自分と同じようなことが他の人の身にも起きないようにと、今回のことを公表することにしたのだとか。

嬉しいはずのポーランド人選手の活躍に味噌をつけたような形になってしまった今回の事件。二度と同じようなことが起こらないよう祈ります。

<情報ソース>

(ポーランドの報道サイトより)

http://www.fakt.pl/skandaliczne-zachowanie-lekarz-z-zus,artykuly,444728,1.html>

http://praca.wp.pl/title,Skoro-Justyna-Kowalczyk-moze-biegac-na-nartach-ze-zlamana-noga-to-pan-moze-pracowac,wid,16407099,wiadomosc.html

スプリスガルト友美/プロフィール
ポーランド在住ライター。今回のオリンピックは、5歳の娘と一緒に日本とポーランド両国の応援で大忙しでした。11月の独立記念日に合わせて幼稚園で国歌を習ってきていた娘は、メダル授与式で国歌を4回も聴けて大はしゃぎ。6年後の東京オリンピックは親子でどのように観戦することになるのか今から楽しみです。ブログ「poziomkaとポーランドの人々」http://poziomka.exblog.jp/