第12回 フリッテン ― Fritten ― ベルギー

フリッテン ― Fritten ― ベルギー

どこの国にも、国民の誰もが愛するソウルフードというものがある。日本なら、さしずめ「おにぎり」といったところだろうか? 甘いもの好きの私としては、ベルギーと言われて真っ先に思いつくのはワッフルやチョコレートだが、ベルギー人が口をそろえてソウルフードだというのは、いわゆる「フライドポテト」なのだ。

ときにフレンチフライなどと呼ばれることからフランスのものかと思われることもあるこの料理だが、この呼び名は第一次世界大戦中に、ベルギーのフランス語圏に駐留していたアメリカ人兵士らが、帰国後にそう呼んだ、いわば誤解からついたもので、発祥の地はベルギー。ベルギーの北方で使われるオランダ語の方言であるフラマン語では、ジャガイモを揚げたこの郷土料理はフリッテンと呼ばれている。

「でも……あのフライドポテトだよね?」などと侮ってはいけない。フリッテンには、10㎜角または12㎜角という定義がある。そしてフランダース政府によって無形文化遺産に登録されており、ついには「発祥の地」「郷土料理」として世界に知らしめるべく、国を挙げてユネスコの世界遺産登録へ向けた活動が始まっているというのだから、その本気度はハンパじゃない。

そこまでいわれると、普段なにげなく食べている付け合せ的なフライドポテトとはどう違うのか、食べてみたくなる。というわけで本場ベルギーへひとっ飛び……できればいいのだが、残念ながら諸事情によりそう簡単にはいかないので、本場さながらの味を東京に居ながらにして味わえる店「POMMEKE(ポムケ)」へ足を運んだ。

在日ベルギー王国大使の元専属料理長バルト・サブロン氏を料理長に迎えた同店のフリッテンは、ジャガイモ大国ベルギーで、もっともフリッテンに適しているとされる「ビンチェ」種を12㎜にカットし、2度揚げ。外はサクサク、中はほっこりとして本当においしい。これにたっぷりのマヨネーズをかけるのがベルギー流だが、メニューには、ほかにトマトケチャップやタルタルソース、そしてピリ辛マヨネーズ「サムライ」などのディップを用意。そして、ベルギーといえばもうひとつ、忘れてはならないベルギービールも各種揃っている。

日に日に暖かくなるこの季節、本物のベルギーフライドポテト「フリッテン」を片手に、お花見やピクニックを楽しみたい。

POMMEKE(ポムケ) 外苑前店

凛 福子(りん ふくこ)/プロフィール
東京在住。日本とアジアを中心に世界各地を、旅モノと食べモノをメインテーマに飛び回る日々。諸事情によりあまり旅に出られていないのがちょっとストレス……でも、春の食材が店頭に並び始めたことにワクワク! そのとき、そのときを楽しもうという単細胞。