第6回 学校の違いは授業だけにあらず

これまで国語、算数、英語に宗教、体育、と学校での授業について書いてきたが、今回はそれ以外の学校の様子に触れたいと思う。

時折、日本の学校に通った5か月間の楽しかった思い出を話してくれる娘。その中によく登場するテーマといえば給食と掃除のことだ。ポーランドの学校では子ども達ではなく、清掃員や用務員の方が校内の清掃をしている。日本で登校初日に名前を書いた雑巾を持っていかなければならないと知ったとき、娘は怪訝そうな顔をしていたが、みんなで一緒に掃除することが分かってすぐに納得。班ごとに分担して毎日いろいろなところを掃除するのは面白かったようだ。今でも自分から進んで部屋の床部分の雑巾がけをしてくれる。ポーランドではモップがけや箒での掃き掃除がスタンダードなので、思わぬところで日本式の掃除の仕方を覚えてきたものだと感心してしまう。自分で掃除をするという習慣を身に着けてくれたことも収穫だった。

給食のほうは、各教室で当番のグループが白衣を着てクラスのみんなに配膳する、というのが新鮮だったとか。ポーランドでも献立は決まっているが、食堂で働く方から受け取り、食堂で食べるというカフェテリア方式。全員が利用しているわけではなく、家からサンドイッチなどのお弁当を持参する子も多い。

我が家は「お弁当派」で、毎日サンドイッチにソーセージや野菜、果物などのちょっとしたおかずを持たせている。給食にしないのは、授業の終わる時間にも関係している。日本のように毎日給食を食べた後にまだ授業があって午後2時か3時に下校、というのなら学校でしっかり食べてきてもらいたいと思うのだろうが、こちらでは毎日終わる時間がまちまちで、しかも11時半や12時半に終わる日まである。そうなると、私がいつでも迎えに行ける我が家では、わざわざ給食を食べるためだけに学校に残るよりも、家に帰ってから家族みんなで同じ昼食を食べたほうが効率的かつ経済的だ。面白いことに、家から持ってきたパンや果物は、休み時間に食べてもよいらしい。廊下で友達とおしゃべりしながらパンをかじる子ども達を見たときは驚いたが、こちらでは普通だという。スポーツ小学校であるがゆえに運動の時間が多く、細かな栄養補給が大事との考えもあるようだ。ともあれ、11時を過ぎるとお腹が空いて給食の時間が待ち遠しく思われた自分の小学校生活を思い返すと、なんともうらやましい話に思われた。

市の中心にあるオペラ劇場。子ども向けの演目がある日には、児童を乗せてきた観光バスが連なって駐車されている

校外学習に目を移してみよう。

遠足があるというのはどちらの国でも共通のこと。幼稚園のときは遠足に持っていくお弁当まで幼稚園側で用意してくれたので大助かりだったが、小学校では日本と同じようにお弁当持参だ。ただ「遠足のしおり」のようなものはもちろんなかったので、持たせるものに少々戸惑ってしまった。おやつはいくらまでなのか、水筒の中身は水やお茶でなければだめなのか。きっちり書かれていないとどうしてよいか分からなくなるなんて、慣れというのは恐ろしい。

日本では秋に、ポーランドでは春にそれぞれ遠足があったので、運のよいことに娘はどちらの学校でも遠足に参加することができた。日本で行ったのは動物園だったのだが、こちらでの行き先はバスで1時間のところにあるテーマパーク。海賊やインディアンと一緒にカヌーに乗ったりフィールドアスレチックに挑戦したり、という遠足にうってつけの場所で、友達と一緒に大はしゃぎだったようだ。“常識の範囲内で”お小遣いも持たせてよいということだったが、1年生で買い物することはないだろうと思い持たせなかった。すると、バスから降りてくる子ども達がいろいろなオモチャを抱えていたのにびっくり。お小遣いは“家族へのお土産を買ってくるためのお金”という私の中の常識が覆されたからかもしれない。

こちらも市の中心にある劇場。主に現代劇が上演される

学年にもよるが、映画や現代劇、オペラなどの観劇も校外学習の一環として行われている。小学1年生は公共のバスや路面電車に乗ってみんなで人形劇を見に行った。ポーランドに来たばかりの頃、千円ほどでオペラを見られたことに驚きを通り越して感動すら覚えたが、情操教育のためにも、学校近辺に劇場があり、手ごろな価格で見に行けるというのは素晴らしい。学年が上がるにつれ、どんな芸術鑑賞をするようになるのか。娘のクラスに混じって一緒に見に行きたいと思ってしまうような演目が出てくる日も近いだろう。

スプリスガルト友美/プロフィール
ポーランド在住ライター。長かった夏休みが終わり、娘は小学2年生になった。こちらは夏休みの宿題というものがない。おまけに習い事までお休み。そのためか、先日行われた今年度初の保護者会では、子ども達がせっかく覚えた読み書きも計算も忘れてしまったと先生が嘆いていらした。我が家では私の日本人的感覚で、日本の教科書を使って2年生の国語と算数の勉強を進めたり、ポーランド語の本を音読させたりしていたので、娘のほうはすんなりと学習に戻れたようだ。子どもの頃あんなに面倒だった夏休みの宿題のありがたみを今さらながら感じている。ブログ「poziomkaとポーランドの人々」