黒人の髪の毛って1年で1センチほどしか伸びないそうです。テレビなどで見るまっすぐの髪、あれはカツラ、にせものです。知ってました? 私は知りませんでした。ストレートパーマかと思っていましたが、ギニアで見た黒人さんはみな激しい縮れ毛で、まっすぐにするのは並大抵ではないようです。
外国で髪を切るのが好きなので、ギニアでもぜひ美容院に行きたいと思いました。これまでベトナムやタイ、クロアチア、ポーランドなどあちこちで切りました。行きたい、行きたいと主張しましたが、みなから止められました。「アジア人のまっすぐな髪なんて知らないんだから、絶対やめた方がいい」と。
美容院の前にいって、何をしているかのぞいて見てみました。確かに、みなのいうとおり。ギニアの美容院って、いわゆる日本やドイツの美容院とまったく違うのですね。切るのがメインではなく、付け毛をつけたり、付け毛やカツラをつけるために地毛を編み込んだりするのが主な仕事なのです。はさみを使って髪をちょきちょきというのはごくわずか。人種が違えば、髪の質が違い、美容師の仕事内容も違ってくる。うーん、新しい発見でした。ちなみに男性は、生えているのか生えていないのかよくわからないくらい、短くしている人が多いです。女性でカツラをかぶっていない人は、地肌に沿うように髪を編んでおり、いわゆるふわふわのアフロのヘアースタイルの人はほとんど見かけませんでした。暑いからなのか、ファッション的に不適切だからなのかわかりません。
付け毛やカツラを使えば、いちいち髪を染めたり、伸びるのを待ったり、パーマを当てたりしなくていいわけで、楽チンですね。みなカツラとわかっているので「カツラをつけるのは髪に問題のある人」というようなマイナスイメージもない。カツラもストレート、カール、色つきなどさまざまあり、服と同じように気分によって取替え可能なファッションのひとつなのです。
ドイツに戻り、エチオピア人の知り合いと話をしていたら、エチオピア人は髪がまあまあ伸びるとのこと。確かに彼女は黒人ですが、ふわふわの髪が肩まで伸びています。よく聞いてみると、肌が本当に真っ黒な人はあまり伸びず、明るめの人は伸びるとのこと。「ギニア人は真っ黒だからね。一生、ほとんど伸びない人もいるよ」といわれ、うなりました。黒人と一口にいっても、いろいろな違いがあるのですね(当たり前ですが)。本当に勉強になりました。
≪田口理穂(たぐちりほ)/プロフィール≫
1996年よりドイツ在住。ジャーナリスト、ドイツ州裁判所認定通訳。 ドイツで、アフリカのパフォーマーたちによるコメディーアクロバットショーを見に行きました。たくましい筋肉と、しなやかな体。力強い太鼓が響き、激しい踊りを見て、ギニアを思い出しました。白人のウェイトレスたちはアフリカ風の布を頭に巻き、会場はサファリ気分満載。欧米人が想像する典型的なアフリカ像ですね。けれど黒人の観客はひとりもおらず、ちょっと残念でした。