第5回 レッスンの場はアウトドア

ニュージーランドは自然が豊富な国であることは、世界的に知られている。加えて、人口密度が低く、スペースにゆとりがある。こんな環境のおかげで、アウトドアで行うお稽古事は子どもたちにとって、よりダイナミックで挑戦しがいがあるものになっている。

馬との一体感を楽しむ乗馬

最初は引き綱で先生が付き添ってくれる乗馬のレッスン© Chris Barnes (CC BY 2.0)

娘は、小学生時代1年半ほど乗馬を習っていたことがある。私たちは町に住んでいるが、彼女が通っていた小学校は、町から少し出たところに広がる酪農地にあり、牛や馬、ブタ、ニワトリなどは身近な存在だった。学校の向かい側にある家には小さな馬場があって、子どもたちが馬に乗る姿がよく見え、娘はいつもうらやましがっていた。学校の送り迎えの際、私はそこのお母さんが乗馬を教えていることを小耳にはさんだ。

娘が長い間やりたがっている習い事なのはわかっていても、レッスン代が一番のネックになって躊躇していた。しかしそこでのレッスンは、週1回放課後1時間半で35NZドル(約2,700円)。私たちにしてみれば結構な額なのだが、ほかの乗馬スクールと比べると、半分ちょっとと破格なのを知り、やらせてみることにした。ヘルメットは貸してくれたし、ブーツもひざまでの長ぐつでいいと言われたので、気楽だった。乗馬ズボンだけ、セカンドハンドのものをそろえて、レッスン開始となった。

レッスンでは、人間の年齢にして90歳はいっていようかというおばあちゃん馬、コーディが娘の相棒となった。おとなしいので、今まで何人もの初心者を乗せてきたベテラン(?)だ。最終的に娘はコーディと一緒に、低い障害物をまたいだり、隣町まで散歩できるようになった。

乗馬のレッスンがユニークなのは、乗り方を身につけるだけではなく、馬の世話もするところだ。餌やりはもちろん、水をかけてやったり、ブラッシングをしてあげたり、蹄の裏をきれいにしてあげたり。牧場に再び放してやるところまで、しっかりと面倒を見る。世話をする過程で、馬と人間との間には信頼関係が築かれる。娘はペットとはまた違った、動物との関係があることを知り、楽しんだようだ。

エネルギッシュな子どもにぴったりのBMX

友人Aさんの息子が7~8歳の時、夢中だったのが、BMXだ。彼がやっていたのは、ジャンプ台やコーナーのあるコースで速さを競うタイプ。代表組織であるBMXニュージーランド所属のクラブが国内各地にあり、その1つ登録し、練習・レースに参加する。個人レッスン、グループレッスンの2つのチョイスがある練習では、コースでのスタートの仕方、コーナーやバンプをクリアするコツなどを教え込まれる。

乗る方も、見る方もスリル満点のBMX © Tony Bernard (CC BY-SA 2.0)

レベルは年齢によって分けられており、彼が所属していたのは、「キーウィ・スプロケッツ」という一番年少のレベル。年齢・レベルが上がるにつれ、男女別になるのだそうだ。Aさんが払っていたのは、BMXニュージーランドの会費40NZドル(約3,000円)と、地元クラブの会費30NZドル(約2,300円)といったところだ。ほかにもナンバープレート代、ギア代、レース参加代などの費用がかかる。ギアに関していえば、セカンドハンドや、レンタルで済ませることも可能だそうだ。

Aさんの息子さんはかなり高いところからのジャンプの着地に失敗し、競技がすっかり怖くなり、結局やめてしまったという。小学生が参加するとはいえ、BMXが「エクストリームスポーツ」であることには違いないだろう。

海での救命活動者を目指すライフセービング

海に囲まれたニュージーランドでは、夏、ビーチで過ごす機会も多い。海岸の要所要所にはライフセーバーがいて、赤と黄の旗がはためく2本のポールで示された範囲を特に監視してくれている。その範囲内で人々は泳ぐよう指導されている。

水難事故を予防し、救命活動を行うライフセービングも、1つの「スポーツ」として定着している。小学生なら、各地にあるクラブの、5~13歳までのジュニアグループに籍を置く。グループに入るには最低25メートルを1人で泳げることが条件だ。入会後は週に2回、海やプールで泳ぎを主にした練習が行われる。

14歳以上には、ライフセーバーへの道の第一歩、「ライフガード・アワード」を取得するチャンスが開かれている。これを翌年取ろうという13歳の子どものためには、特別水難救助やパトロールなどを学ぶコースが用意されている。

クラブ会費は、小学生1人につき、年間100NZドル(約7,700円)。子どもの数が増えると割り引きがある。競技会への出場は、小・中・高校生であれば無料。将来、私たちの命を守ってくれるライフセーバーの卵たちなのだから、大事にしなくては、という考えがあるのだろう。

海であれ、陸であれ、大空のもと、のびのびと活動できるニュージーキッズはとてもラッキー。親としても、こんなチャンスを子どもに与えられることはうれしいことだ。

クローディアー真理/プロフィール
フリーランスライター。1998年よりニュージーランド在住。ウェブサイトを中心に、環境、ビジネス、子育て・教育といった分野で執筆活動を行う。娘が習った乗馬は、実は私も小さい時あこがれたスポーツ。乗りこそしなかったが、娘を手伝って、馬の世話をするのはとても良い経験になった。