255号/スプリスガルト友美

6月12日、修士論文審査・修士課程試験に無事合格し、長いようで短かった私の“ポーランド留学生活”が幕を閉じた。通っていたアダム・ミツキェヴィチ大学前身のポズナン大学が創立百周年を迎えた1か月後のことだった。

修士課程2年目の後半は時間との闘いだった。というのも、夫の仕事の都合で6月30日発の飛行機に乗って5か月間の日本滞在に出発することが決まっていたからだ。今年度の授業は6月16日まででその後試験期間という日程だったのだが、私の場合はそれより前に全ての単位を取得し、最後の修士論文審査に臨まなければならなかった。そのため、毎回の授業の準備と並行して試験勉強にレポート執筆、そして何よりも大事な修士論文執筆をこなすことになってしまったのだった。

出発3日ほど前、念願の卒業証書を受け取った。在学中お世話になった事務のタチアナさんと最後の手続きを済ませると、嬉しさと同時に寂しさもこみあげてきた。すでに試験期間に入って、人影もまばらな大学の建物の中を歩いてみる。迷路のような建物で、最初のうちは教室を探すのも一苦労だったのが嘘のように、あちらこちらでの様々な授業の思い出が蘇ってくる。ついこの間まで、廊下で随分と年下の“同級生”たちと他愛ないおしゃべりを交わしたことさえ懐かしく感じる。

借りていた最後の本を返しに行ったとき、すっかり顔なじみになった大学図書館の司書さんからは、「またいつでも本を読みに来てくださいね」と声をかけて頂いた。まだまだ気になる本がたくさんあったので、とてもありがたい言葉だった。

思えば、結婚して子供がいるという状況で大学に戻るというのは大変な決断だった。ポーランド語の面だけではなく、日々の生活において夫にはたくさん手を貸してもらった。感謝してもしきれないほどだ。小学生の娘には寂しい思いをさせてしまったかもしれない。自分の勉強で手がいっぱいで、勉強を見てあげたり一緒におしゃべりしたりする時間が減ってしまったのだから。

それでも最後までサポートしてくれた二人に心から、本当にどうもありがとう。

(ポーランド・ポズナン在住 スプリスガルト友美)