258号/西川桂子

10月21日、カナダで総選挙が行われた。選挙があると、カナダ人の友人たちと、どの政党をどういった理由で支持しているか、あるいは支持しないかなどと話をする機会が増える。

そんな時、カナダ国籍を持たない私は大いに疎外感を感じる。私が持っている永住権では投票ができない。つまり、市民権を取得しないと、参政権を持つことができないのだ。特に前回の総選挙で自由党が、嗜好としての大麻使用の合法化を公約に掲げたときには、「とんでもない!」という気持ちが強く「投票したい」と思った。

「投票権がない」と話すと、「Keikoは25年以上、カナダで住んでいるのに、市民権は取っていないの?」とカナダ人に驚かれる。そこで、日本政府が二重国籍を認めていないことを説明する。

「いつか日本に帰るつもりなの? ずっとカナダで暮らすのなら、日本国籍は必要なの?」という問いに、「親が生きている限り、何らかの事情で長期で日本に帰国する必要がでてくるかもしれない。だから、日本国籍は保持しておきたい」と答えてきた。しかし、母が亡くなり、残る父も高齢でいつ何が起こるか分からない。『その時』が来た後、自分の国籍をどうするのか考えるようになった。

日本の在外選挙に参加していても、私の生活に直接、関係しているのはカナダの政治だ。カナダの市民権を取って参政権を手に入れるべきなのかもしれない。周囲には「カナダの永住権更新が面倒」、あるいは「お隣のアメリカに行くのにカナダ人になっておくと便利」と軽い気持ちで、市民権を取得して、日本政府には通知していない日本人もいる。しかし、国籍法上では、通知の有無に関係なく、他の国籍を新たに取得した時点で日本国籍を失うと聞くと、カナダ国籍を取得する気にはならずにいる。

今のところは「カナダに住む日本人」として生きていきたいと思う。

(カナダ・バンクーバー在住 西川桂子)