第11回 地元でフランス語講座を始める

以前、フランス語通訳のボランティアを頼まれた地元二宮在住のソムリエMさんから、一緒にフランス語講座を開かないかと提案される。

Mさんは自宅で隠れ家的サロンを経営しているが、彼女のアイデアはそこを使って、月2回土曜の11時からまず1時間は私がフランス語を教えて、その後彼女がフランスのカフェやカジュアルレストランで出てくるような1プレートの料理を振るまう、というもの。「旅行中パリのカフェで、一人でご飯が食べられるフランス語力を身につけましょう」をテーマに会話中心の講座にしよう、と話が決まった。

こんな田舎町にフランス語を学びたい人なんているのだろうか? と疑問に感じたが、1回2,000円という手頃な料金で美味しいランチも味わえることで人の気を引くかもしれないと思い直す。それで「美味しいフランス講座」と銘打ってチラシを作り、SNSで宣伝し、友人知人に声をかける。

一人でも受講希望者がいればスタートしましょう、とMさんと話していたのだが、フタを開けてみれば、9名の申し込みがあった。20代〜60代の男女で、会社経営者から子育て中の主婦、OL、定年退職者まで顔ぶれも様々である。

今までに3回の講座を開いたが、食事の後に生徒さんの経営するファームに行ってお茶したり、また、親子3人で参加する家族がお父さんの誕生祝いのケーキを持参してみんなでお祝いをしたり。和気藹々とした楽しい集まりになっている。

帰国当初はこんな田舎にフランス語を使う仕事なんてないだろう、と思い込んでいた。しかし、東京には私程度のフランス語力の持ち主はたくさんいることを考えると二宮だったからこそ自分にもこんなチャンスが巡って来たのだ。

来年1月から平日夕方にディナー付きのフランス講座を開くことも計画している。

 

江草由香(えぐさゆか)/プロフィール
編集者・ライター・通訳・翻訳者・イベントコーディネーター。
立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。フランスでPRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発フリーペーパー『Bisouビズ』を創刊。現在パリ・フランスとアート&モノづくりをテーマにしたサイト『BisouFranceビズ・フランス』の編集長。個人ブログは『湘南二宮時々パリ』