第18回(最終回) 息子、無事に日本の高校を卒業する

3月5日に息子が3年間通った日本の高校を無事に卒業した。

真面目に通学し、定期試験で赤点を取ることもなかったので、卒業に不安はなかったものの親として感慨深い。

残念なことに卒業式はコロナウィルス感染拡大防止のため、保護者はオンラインによる列席となる。

フランスの学校では小学校から高校まで、入学式や卒業式というものが行われない。息子は日本の高校に1学年の7月に編入したので4月の半ばに入試、5月半ばまで通った後、一度フランスに戻ってリセの1学年を終了し、6月半ばに日本に戻り、 (7月に正式に入学)した。4月の入学式には参列しておらず、だから、母としては高校の卒業式で息子の晴れ姿を見ることを楽しみにしていたので、がっかりした。

当日、パソコンで卒業式の様子を見ていると、最後に式次第には載っていないサプライズ映像が流れた。生徒一人一人が両親に向けた感謝のメッセージを述べるのだが、我が子の「弁当(を作ってくれて)お疲れ様でした」の言葉に涙がこぼれる。

家で一人、人目を憚らずに泣けるのはリモート列席のメリットかもしれない。

卒業文集には、保護者もメッセージを寄せることになり、以下の拙文が掲載された。

<人と交わるのが苦手な貴方は、それでも野球クラブに入ったり、インターンシップやサマーキャンプにも積極的に参加しました。生まれ育った国を離れて母と二人きりの日本の生活。毎日、淡々と学校に通い、家に戻ると一人でパソコンに向かい、あまり多くを語らない貴方もいつの間にか将来やりたいことをちゃんと見つけて、そのための学校に入る努力もして、無事合格しましたね。母は貴方に友達ができないことばかりを気にしていましたが、夢中になれることがあって、一人で生きる力を身につけられれば、それでいいと思えるようになりました。あっと言う間の3年間でしたが、本当によく頑張りました。卒業おめでとう。>

この連載も今回で最後。読んで下さった方々、そして的確なアドバイスをいただいた「地球はとっても丸い」編集部の皆様、ありがとうございました。

 

江草由香(えぐさゆか)/プロフィール
編集者・ライター・通訳・翻訳者・イベントコーディネーター。
立教大学仏文科卒。映画理論を学ぶために96年に渡仏し、パリ第一大学映画学科に登録。フランスでPRESSE FEMININE JAPONAISEを設立し、99年にパリ発フリーペーパー『Bisouビズ』を創刊。現在パリ・フランスとアート&モノづくりをテーマにしたサイト『BisouFranceビズ・フランス』の編集長。個人ブログは『湘南二宮時々パリ』