第7回 インドの環境問題に向き合う(1)

2020年も引き続きインドの摩訶不思議を取り上げていきたい。特に今年は、インドの抱える課題のひとつである環境問題をテーマにしたいと思う。

インド経験あっての新生活であったが、長年の間に鍛えられたはずの強い心は、毎日目にする光景や出来事によって案外あっさりとその鎧をはがされてしまった。

一番ガツンときたのは、散乱する大量のゴミとそれに群がる動物たちを見た時だ。10年前にデリーで見た光景と何も変わっていない。月日は、人々の生活を劇的に便利にしたのに、一歩家の外に出ると、ポイ捨てなのか、誰かに放置されたのか、もともとの置き場が荒らされたのか、ゴミが視界に入ってこない時はない。インドの社会とつながった途端に、常にゴミと向き合うというストレスを感じることになった。

寺院(中央の岩)の脇に積み上げられたゴミ。焦げた廃タイヤなどは、寒い時に火をつけて暖を取ったあと

娘たちが片道1時間半バスに揺られて通う道も、目のやり場のない状態だ。あふれたゴミ置き場に集まって来る牛、犬や鳥を見ながら、「毎日、こんな感じなの?」と聞くと、「ママ、今日はまだいい方だよ。もっとすごいものをいっぱい見るよ」と返ってきた。どんなすごいものを見たのか聞く勇気がなかった。こんな状況について、適切な言葉で説明をしてあげたいが、私自身がその準備ができていない。インドのゴミの問題は、私のちっぽけな知識や意見など、あっけなく一蹴されるほど、巨大で手の付けられない怪物のように、日々ものすごいスピードで大きくなっているからだ。

今年度、ベンガルールの多くの学校では、社会科の課題として環境問題を取り上げている。昨年9月、世界中で話題となった「Grobal Climate Strike(気候ストライキ)」は、インド国内にも大きな波紋を広げた。9月20日のストライキ当日は、環境問題への意思表示として休みとなる学校もあり、人々の関心は決して低いわけではない。

知人の子供が通うプレスクールでは、冬休みの宿題として、「よりよい社会(地球)を作るために何ができるか」という環境問題を包括した壮大なテーマが課されたそうだ。その課題は、2020年度に小学1年生となる5歳児向けのものだが、インドの子どもたちはどのような視点で環境問題を切り取るのだろう。わが子の宿題でなくてよかったと思いつつ、インドの環境問題については、家庭で一度きちんと話し合いをしなくてはならないとも感じたのだ。

 

さいとうかずみ/プロフィール
2007年より約8年インドのデリーとその近郊に在住。その後、日本、インドネシアに約2年ずつ滞在して、2019年よりインドのベンガルールに戻る。数年ごとに引越しを繰り返しているが、新しい環境にもすぐに慣れ、楽しいことを見つけられる子どもたちの柔軟性に救われる日々。