170号/スプリスガルト友美

まもなく4年に1度のサッカーの祭典が始まる。

といっても、ワールドカップではなく、欧州選手権のことだ。しかも、今回はポーランド・ウクライナ共催とあって、私もそのお祭り騒ぎの渦の中にいる。町中のショーウィンドウや店内のディスプレイには大会のキャラクター商品が並び、本物の優勝カップまでもがポーランドで試合の行われる4都市を巡回して、一般公開された。

一方で、交通機関整備の遅れが問題になっている。

開催国が決まったのは2007年4月のことだった。それから5年経つが、開幕の日を目前に控えた今も、市街地を中心に道路が掘り返され、路面電車やバスは迂回路を走っている。偶然にも夫の実家のあるポズナンと、現在住んでいるグダンスクの両方が開催地に選ばれており、毎日のように工事の進み具合を目にするので、どんな状態で開幕を迎えることになるのかハラハラドキドキしてしまう。

ふと、私が初めてポーランドを訪れた17年前を思い返してみる。

車体をきしませながら走る路面電車、共産主義時代の面影を残す店やデパート。それらはどれも暗い感じがし、その第一印象は「灰色」だった。ポーランドでこんな大きな国際大会が開催されるなんて想像もできなかった。

その後2005年のEU加盟を経て、どんどん発展してきたポーランド。いまや灰色といえば冬の寒空くらいだ。そう考えると、既に4つのスタジアムが立派に生まれ変わり、開催地の駅や空港が見違えるほどきれいに改装されたのだから、道路のことだって心配する必要はないのかもしれない。

開幕試合は6月8日。ポーランド対ギリシャ戦が、ワルシャワの国立競技場で行われる。ポーランドで開催される初めての大きな国際大会の行方を見守りたい。共催国であるウクライナの政情不安定なのが、ちょっぴり気がかりではあるけれど。

(ポーランド・グダンスク在住 スプリスガルト友美)