再生可能エネルギーの重要性が論じられる昨今、ベルリンに連邦交通建設都市開発省の「プラスエネルギー効率住宅」があります。エネルギー効率を追求したモデルハウスで、断熱など最新の省エネ技術を駆使し、電気自動車も置いています。この130平方メートルの家には、一般から選ばれた家族4人が2012年3月から2013年5月まで住んでおり、実際の生活の中で技術がどのように活用されているか、改善の余地はあるかなど、研究の対象となっています。
エコハウスには通常の住居より省エネ仕様の「低エネルギーハウス」や、太陽熱など外からのエネルギーを利用する「パッシブハウス」などがありますが、この「プラスエネルギー効率住宅」は、エネルギーの使用量よりも発電量の方が多いのが特徴。発電する1万6000kWhのうち、消費は1万kWh程度と見られており、残りは送電線に送られ買い取りとなります。この建物は同省のコンクールで優勝したコンセプトを元にしており、建物自体もリサイクル可能な素材でできています。
建物の内外で湿度や温度を測定し、断熱材の研究材料としています。外壁と屋上の太陽光発電装置で、発電しています。電気自動車は、BMWやフォルクスワーゲンなど5社が各3ヶ月ずつ提供。電気自動車の充電装置も完備しており、蓄電技術も大事な研究テーマのひとつです。送電線の安定性やエネルギーマネージメントに加え、住んでいる人たちの技術への受容など人間社会科学の面の研究もなされます。
家族はブログで生活の様子を公開しており、この住宅の暮らしを堪能している様子がうかがえます。最近の投稿にはバカンスで遠出したときの大変さをつづっていました。電気自動車の充電場所が限られており、時間もかかるため、きっちり計画しておかないと走れなくなるとのこと。反面、市内など近距離の移動は、静かだし快適です。
ベルリン市内のど真ん中に位置するこの住宅。7月の開会式にはメルケル首相も参加し、ドイツがいかにこの分野に力を入れているか内外に示しました。エネルギーの分散型供給が実現すれば、大きな発電所や送電網も必要なくなります。この実験の成果は、いずれ各分野で大いにいかされることでしょう。
プラスエネルギー効率住宅について連邦交通建設都市開発省のサイト(ドイツ語)
≪田口理穂/プロフィール≫
ジャーナリスト、ドイツ語通訳。1996年より北ドイツのハノーバー在住。
築100年以上のうちのアパートは、断熱とは無縁。冬は暖房をずっとつけておかないと、すぐ寒くなります。玄関の木の扉もゆがんでおり、隙間風がすーすー。だからカーテンを付けました。最近断熱工事をしている建物をときどき見かけますが、うちの大家さんはしそうにない。この冬も暖房を全開にしてしのぎます。