第1回 小学1年生を2つの学校で過ごすということ

ポーランドで通っている小学校の入口前では桜に似た花が咲いている。満開の桜が美しい日本の小学校には劣るが、つい懐かしさを感じてしまう

また桜の季節がやってきた。新しいことが始まる季節だ。学校や大学が秋に始まるポーランド生活にすっかり慣れてしまったとはいえ、春になるといつも何かを始めたくなってしまう。半年間の日本滞在を終え、住み慣れたポーランドの我が家に戻ってきたばかりの私たち。今年は特に新たな始まりのように思えて、心なしかドキドキしている。

夫の仕事の都合で半年間日本に住むことが決まったのは、ちょうど1年前の春のことだった。娘が9月から希望の小学校に入学できることが分かって喜んでいた頃だったので、久々に日本に住めるという嬉しさがありながら、娘の学校生活が急に心配になり、期待と不安が入り混じった複雑な気持ちになったことを覚えている。とはいえ、文字を習い始める小学1年生で、ポーランドと日本の両方の学校で学べるというのはまたとないチャンスでもあった。ポーランド生まれでポーランド育ちの娘ではあったが、日本語も覚えてもらいたいといつも思っていた。しかし会話はできても文字を勉強する段階になるとなかなか難しいと感じ始めていたのも事実だった。

問題は、両国で新年度の開始時期が半年ずれることだ。9月にポーランドの小学校に入学した娘は1か月学校生活を送っただけで、日本では既に4月から学校で学んでいる同級生の中に入っていかなければならない。前もって連絡しておいた転入先の学校からは、ひらがなとカタカナの読み書き、一ケタの足し算・引き算はできるようにしておいてくださいといわれたので、大使館から支給された日本の教科書を使いながら、張り切って勉強を進めるはずだったのだが……。

夏休みまでは残りの幼稚園生活を楽しむのに忙しく、あっという間に時は流れ、9月に小学校に入学してしまうと今度は学校生活に慣れるのに精一杯で、日本の学校で勉強するための準備がほとんどできないままポーランドを後にすることになってしまった。今になってみれば、そんな状態で日本の子どもたちに追いつくためによく頑張ったなと思う。

あのまま日本にいれば、娘は今頃ほかの同級生と一緒にもう小学2年生になっていたはずなのに、ポーランドに戻ってきたことでまだあと4か月は1年生のままなんだなと、ちょっぴり残念に思うこともある。けれど、小学1年生の学校生活を二つの異なる文化を持った学校で送ることができたのは、娘にとっても私たち“親”にとっても貴重な体験だったのではないだろうか。特に娘にはとても充実した、かなり中身の濃い半年間であったように思う。そんな娘を日々見ながら、日本の学校とポーランドの学校について感じていることを、これから数回に分けて綴っていきたい。

スプリスガルト友美/プロフィール
ポーランド在住ライター。日本の学校に通っているときは、ポーランドの学校に早く帰りたいといっていた娘だが、ポーランドに戻ってきた今は、日本の学校にまた行きたいなとつぶやいている。娘にとってはどちらも大切な「自分の学校」になっているのかもしれない。ブログ「poziomkaとポーランドの人々」