韓国の少子化と教育問題/原美和子(韓国・釜山在住)
現在、世界でも一、二を争う程、少子化が進んでいる韓国。2005年に女性が生涯に産む子どもの数を表す出生率が1.08にまで落ち込み、その後、2007年には1.26に回復をしたものの、依然として少子化に歯止めがかかっているという状況ではない。
韓国でも、都市部では核家族化が進み、一家庭に於ける子どもの人数は1人、即ち一人っ子の家庭が目立つ。韓国で何故、日本以上の少子化が猛スピードで進んでいるのかを考えてみたい。
日本でも韓国の教育事情については度々、マスコミでも取り上げられ、詳しくは知らなくとも、「韓国=教育熱心」という印象を持っている人も多いのではないだろうか?特に、最近では幼児期からの早期教育を重要視する傾向が高まっている。例えば、英語教育や、韓国の国語に当たるハングルの読み書きや計算の小学校入学前までの習得。また、各幼稚園や保育園でも保護者にいかに園のプログラムが優れているかをアピールすることに試行錯誤している。
また、小学校就学前の幼児を対象とした英語塾や学習塾の生徒の獲得合戦も過熱気味である。このようなことから、韓国で子ども一人当たりにかける一月の教育費は中産層の家庭で100万ウォン(日本円で10万円)に相当するという試算も出ている。これでは、子どもを一人当たり成人まで育て上げるのも、親の負担は非常に大きなものとなり、子どもを一人以上産むことを考えざるを得ないというのが親の本音なのだ。
儒教の影響が現在でも残る韓国では、「学を究めることこそ、将来が約束される」という考えが「学歴至上主義」につながっていると言える。日本でも教育への関心は高いという点では同じだが、韓国では部活動が盛んに行われる環境がなく、日本のように勉学以外のスポーツや技術などの分野でも打ち込める環境が少なからずあるというのが韓国との差である。単に大学に進学するためだけの勉強ではなく、様々な人に門戸を開き、学べる環境を整えていかないことには、韓国の少子化と教育の質の低下は避けられないのではないだろうか。