保護者が決める(在米国・ミシガン州)/椰子ノ木やほい
「お母さん、この手紙にサインしてね」アメリカの公立学校にお世話になっている我が家の子どもたちは、学校で事あるごとに、保護者の許諾サインを求めてくる。サインを提出しないと、せっかくの楽しそうな学校行事に参加できないからだ。
日本で暮らしている頃は、遠足、キャンプ、性教育の授業など、学校教育の一環で行われる行事や活動に参加するのは当然だと思っていた。しかし、ここでは、どんな行事や活動も、保護者が主体となりその都度、参加、不参加を決める。不参加を決めたとしても、参加しないことで子どもたちが不利益を受けることはない。その場合、学校は、ちゃんと別の授業を用意してくれるからだ。
よくよく、考えてみれば、異なる人種が集うアメリカの学校において、それぞれの文化や宗教などあらゆる背景の違いを尊重するためには、こうした配慮は不可欠なのだろう。当初、内容を確かめもせず、サインの大安売りをしていた私は、いちいちお伺いを立てられるのも面倒だと思ったものだが、我が子が関わる行事や活動を保護者としてきっちり把握し、それが必要、妥当かを考えてみることは悪くない。
サインをする度、子どもたちに「与えるもの」「与えること」の責任は、保護者が持つのだということを意識させられる。
【朝日小学生新聞「朝日おかあさん新聞」掲載】