地球スタイルで子どもを育てている、世界各地に在住のライターが独自の視点で綴ります。

第12回(最終回):悲願の無痛分娩/靴家さちこ

"It's  opened(子宮口が開いてます)!!"という私の叫び声に反応して、助産婦さんが駆け付けた。そして、足の間をのぞいて"Yes, it's opened(ホントだ、開いてますね)"と確認する。慌てて、無痛分娩の処置をお願いすると" too late(もう遅すぎです)"と首を横に振った。フィンランドでの初の出産と無痛分娩は、ライターとして、いつの日か記事を書くのに有用だろうと、たくましい野心を持っていた私は、「ノォオオオー!」と叫んだ。

 

なおも助産婦が"Push, push(いきんで)!"と指示を出す。頭がもう見えているそうだ。こうなったら、とっとと終わってくれ。私はすでに決めておいた我が子の名前を叫んだ。「ユーウーキぃー!」「オギャー!」夫の後日談によると、優樹の泣き声は、お腹の中からもう聞こえていたという。2月25日の22時。我が家の次男クンは226事件の一日前にやってきた。産みたてのほやほやを胸に抱き、そっと覗きこむと、その顔は5年前の海渡そのものであった。時間差双子――そんなものがこの世に存在するとすれば、この二人のことをいうのだろう。私たちは優樹のセカンドネームを「デジャブー」とつけることにした――ウソだ。

 

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  このように長々と書き連ねてきたが、日本とフィンランド、どちらが良い出産環境と言えるだろう?これ以上家族を増やす予定はないのだが、もし万が一、あともう一回出産をすることがあれば――日本だったら、今度こそインターネットと口コミを駆使して、食事が豪華でアロマテラピーもしてくれて無痛分娩ができる病院を探し出すだろうし、フィンランドであれば、何が何でも無痛分娩を体験して、悲願の無痛分娩レポートを書いてみたい。――が、そんな野望のためにむやみに生命を授かるべきではないので、私は当面、夫と海渡と優樹の三人のヤロウども囲まれて、にぎやかな紅一点ライフを満喫することに専念する。  

 

                                             了

 

 

長きに渡って最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました。読者の皆様からのご意見・ご感想などがございましたら、靴家さちこ(sapikow2003@yahoo.co.jp)まで、また「入院生活や乳児のお世話の仕方の違いなども、引き続き執筆してほしい!」などというリクエストがございましたら、サイト管理人の椰子ノ木やほいさん(yahoi@chikyumaru.net)までお寄せいただけますと幸いです。                                                

北の果てより感謝をこめて/靴家さちこ

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