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第1回:日・フィン産み比べエキスパートへの道/靴家さちこ

我が家には、日本産の男の子が一人と、フィンランド産の男の子が一人いる。産まれる前にフィンランドに渡る可能性が出てきた長男には、彼の運命をそのままに「海を渡る=海渡(かいと)」と命名し、在住4年目にしてフィンランドで授かった次男には、フィンランドの白樺の木をイメージして「優しい樹=優樹(ゆうき)」と名付けた。この二人がこの世に登場した時のことを振り返って、日本とフィンランドの出産事情を比べてみよう。

 

長男を身ごもったのは2002年の晩秋。まだ日本に住んでいた時のことだった。早速、近くの産婦人科をネットで調べ、アットホームな小さめのクリニックを選んで出かけてみると、優秀そうな若い女の先生が、テキパキと診断を済ませてくれた。妊娠が確定されたものの、まだ12週で胎児が小さく、心拍数が確認できないので一週間後に再診してもらうことになった。ところが――その日を待たずして、ある朝下着に出血の跡を確認した私は、泣きながらクリニックに駆けつけた。胎児の生息は確認できたものの、切迫流産の可能性があるとのことで、私は、絶対安静を申し渡され、夜中でも何かあったらすぐ連絡するようにと、先生の携帯の番号が書かれたメモを渡された。

 

こんなに良い先生が見つかって、と安堵の涙をハンカチで押えていると、先生が「でも、そろそろ産院を確定した方がいいですね」などとおっしゃる。知人友人の間では比較的結婚が早く、妊娠、出産に関して知識が乏しかった私は、このクリニックのような「婦人科」では検診ができても、実際に産むためには「産科」、「産婦人科」がある病院にかかるものだとは知らなかったのだ。その場で先生からお薦めの病院を――出産に夫が立ち会うことも考えて、英語での対応が可能そうなところを――聞いたところ、A病院の名前が挙げられた。

 

早速先生に紹介状を書いてもらい、それを持って、A病院への検診通いが始まった。5ヶ月目に入って順調にせり出してきたお腹に、時期が近付いてきたことを感じてか、夫も病院についてくるようになった。

 

その夫が、これまでフィンランドで仕入れてきた知識を総合させると、30週目まで月に1回、それ以降は月に2回という、日本の病院での内診及び超音波検査の数は「多すぎ」だと言う。私としては、特に初期に出血騒ぎがあったので、胎児の無事を確認することができるのであれば、何度診てもらおうと構わなかったが、夫は、「電磁波が怖くないのか」「胎児をそっとしておいてあげたらいいのに」とあまり喜ばしく思っていない様子。早くも文化の違いを感じた。かくしてこの日を境に、私は日・フィン産み比べエキスパートへの道を歩むことになった――ウソだ。

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